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よん

ゆっくりと、意識が覚醒していくのを感じる。 ああ、今回もダメだった。 そんな絶望が胸に広がっていく。 渋々目を開くと、ベッドに腰掛けたゆうじがこちらを覗き込んでいた。 「あ、起きたね。りつ、おはよう。」 長い指で頬を撫でられて擽ったい。 大きくて温かい、大好きな手。その温もりに擦り寄るように、両腕を伸ばした。 「ん?どうしたの?」 「ゆうじ、ゆうじ」 「うん、ゆうじだよ。おいで。」 ゆうじに抱き締めてもらって、ゆうじの匂いを肺いっぱいに吸い込む。 おひさまみたいに温かくて、優しいゆうじの匂い。 「大丈夫だよ。大丈夫、大丈夫。」 一定のリズムで背中を摩られて、ざわついていた心が次第に落ち着いていく。 この家に来てから、僕は初めて適切な医者の元で適切な治療を受けて、処方された薬を欠かすことなく飲むようになった。たくさんのカウンセリングと、安定剤。どれも僕が生きていくために必要なものだけど、僕にとって一番の精神安定剤は間違いなくゆうじだ。空っぽの僕に、初めての気持ちをいっぱいくれる。 昨日はゆうじが仕事に行っている間に昼寝をしてしまって薬を飲み忘れた。案の定、酷い悪夢に魘されて目が覚めた。そこからの記憶は靄がかかっている。ただ赤くて黒い世界でずっと泣いていたような気がする。 でもきっと、またやってしまったんだ。 ゆうじが手当してくれたであろう右腕には、包帯がぐるぐる巻かれている。 衝動的に体を傷付けたくなる気持ちは、自分ではコントロールすることができない。不意に死にたくて消えたくて堪らなくなるのだ。 「りつ?何考えてる?」 「っ、なんにも。」 不意にゆうじに声を掛けられて、慌てて首を振った。 ゆうじは、僕が考えてることが分かるみたい。 「りつ、生まれてきてくれてありがとう。今日もここにいてくれて、ありがとう。」 りつを抱きしめたまま、ゆうじが耳元でそう囁く。出会ってから毎日欠かさず言ってくれる魔法の呪文。 りつは腹の底からせり上がってくる涙を、ぎゅっと目を瞑ることで誤魔化した。 「ゆうじ、ありがとう。」 ゆうじの元に来てから覚えた言葉。 ごめんなさいの代わりに、ありがとうを沢山言おうって、あの日約束したんだ。自暴自棄になって忘れそうになることも多いけど、その度にゆうじが思い出させてくれる。 今日もちゃんと思い出したよ。 2人のあいことば。 生まれてきてくれて、一緒にいてくれてありがとう。 先のことなんて分からないけど、今日も長い長い一日を、歯を食いしばって必死に生きるよ。貴方と過ごす明日のために。 あいことば

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