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不安と優しさと-1sideりつ

「ねれない…。」 真っ暗な部屋で1人、呟いた。 今日はゆうじが仕事で遅くなる日だ。大きいトラブルがあったからと、朝から心配そうに出掛けて行った。 『ごめんね。大丈夫?何かあったら絶対連絡してね。』 何度も何度もりつにそう言い聞かせて。 つい数十分前にも、ゆうじから電話がかかってきた。 『寂しくない?何も変わりない?ちゃんと眠れる?』 そう聞くゆうじに、寂しいなんて言えなくて、咄嗟に嘘をついた。 『寂しくないよ。もう眠いから、ちゃんと寝れるよ。』 大きなゆうじがいないせいでやけに広く感じるベッド。少しでもゆうじを近くに感じたくて、ゆうじの枕を抱きしめてゆうじの毛布を頭まで被った。 ゆうじがいないと眠れないなんて情けない。 あとどのくらいで帰ってくるんだろう?10分?20分? もし、仕事で遅くなるっていうのが嘘だったら? 僕はこの家でゆうじといたいけど、ゆうじはそうじゃないかもしれない。もう二度と帰るつもりなんてないのかもしれない。 ゆうじがちゃんとこの家に帰ってくる保証なんてどこにもない。 そう思うと、呼吸が苦しくなった。 ゆうじにも捨てられてしまったら、きっと僕は死んでしまう。 「…っ、は…ぅっ…」 胸元でパジャマを握りしめて、ベッドの上で丸くなる。 ゆうじがそんなことするはずないって分かってる。ゆうじを世界で1番信じている。 だけど僕はそれ以上に、僕自身を信じられないんだ。 ぜえぜえとなんとか酸素を吸い込みながら、りつはふらりとベッドから下りた。ふらふらと覚束無い足取りで、廊下を歩く。向かう先はこの家で1番大きなリビング。 りつは、慌ただしくリビングの棚や引き出しを全て開けて回った。 「ない、ない…っ」 この家のどこかにあるはずなのに。ちゃんと、貰ってきたのに。 「アスカ先生の、くすり…、」 眠れない時に、飲んでねって言われたの。あの薬があれば寝れるはずなの。 「…っ、あった…!」 数分後、小さな戸棚の奥にやっと白い袋を発見した。可愛らしい字で“りつくん”と書かれているのを確認して、中身を取り出す。 そしてそのまま、キッチンへと駆け込んで錠剤を1錠飲み込んだ。 てっきりすぐに眠くなるものだと思っていたが、眠気は感じない。 もっと飲まなきゃだめなの、かな? 結局りつは袋の中身を全て水で流し込むように飲んだ。 早く眠ってしまいたい一心で。

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