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不安と優しさと-6

それから、ゆうじが戻ってくるまでアスカ先生と昨日の夜についての話をして過ごした。 「先生に教えてくれる?何でお薬を一気に飲んじゃったの?」 「ゆうじが…ゆうじがいなくて…。僕、もう帰ってこないんじゃないかなって…いつも約束破るから、もう…やだって…なっちゃったんじゃないかって思って…っ。早く朝がきたら、ゆうじが帰ってきてるかもしれない、から…っ」 「そう。不安だったのね。ゆうじくんがいなくて。…りつくん、他には嫌な気持ちになったりしなかった?」 「他…?ううん、ゆうじのことばっかり考えてたから。」 話しながら、再びぽろぽろと涙が落ちていく。 ゆうじで頭がいっぱいで他のことなんて何も覚えてない。 アスカ先生はそんなりつの様子を見て、嬉しそうな悲しそうな、不思議な表情を浮かべていた。 1時間ほどして、色とりどりの花に埋もれながら部屋に戻ってきたゆうじ。 「先生とお話出来た?これ看護師さんたちからりつにって。」 「わぁ…っ」 ゆうじが両手に抱えている花は、赤色、青色、黄色、オレンジ色、ピンク色…。ベッドサイドに花を丁寧に置いていくゆうじの横顔を見つめながら自然と顔が綻んでいくのを感じる。 「かわいいね、お花。」 「うん、可愛いね。体は辛くない?」 「ん、平気。」 もう元気だよ、とゆうじに笑って見せると、ゆうじも安心したように笑ってくれた。 僕ね、ゆうじの笑った顔が大好き。 「もうあんなことしないでね。俺も早く帰るようにするし本当、心臓に悪いから。」 いつもより少し低い声でゆうじが言った言葉に素直に頷く。そもそもこんなことになるなんて思ってもいなかった。 「もうしない。ごめんなさい。」 「俺はりつがいてくれるだけで、いいんだから。」 「僕もゆうじがいてくれるだけでいい。」 「ばか。おいで。」 返事をするより先に、ゆうじの胸に飛び込むように抱き着いた。 優しい優しい大好きなゆうじ。どこにも行かないで。ずっと僕の隣にいてよ。 喉まで出かかったその言葉を、なんとか飲み込んだ。 不安と優しさと

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