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風邪引き-3sideゆうじ
数年ぶりに熱を出した。思えば職場では風邪が流行していたから、そこでもらってきてしまったのかもしれない。
朝から何となく怠いな、という感覚はあったし頭もボーッとしていた。りつに体が熱いと指摘されて熱を計ってみれば39度。記憶にある限り見たことがない数字だった。
不思議なもので、意識してしまえば一気に気分が滅入ってくる。喉が痛いような気もするし何より頭痛が酷い。
嗚呼、折角の休日でりつと出掛けたかったのに。
ソファに座ったまま動けないでいると、りつが突然火を付けたように泣き出した。
死なないでと泣きじゃくるりつ。
勿論こんな風邪で死ぬようなことはない。1晩寝ていれば治るだろう。
そう伝えても優しいりつは泣くばかり。
「死なないよ、大丈夫だよ。」
風邪がうつると可哀想だと思いながらも、りつの細い腰を引き寄せて背中を撫でた。寝室で寝た方がいいとりつに言われたが、こんな状態のりつを置いて寝れるわけない。寝ている間にまた何かあったらと想像するだけで恐ろしい。
せめて今日はあまり無理せず静かに過ごそう、という結論に辿り着いた所で、泣いていたりつが顔を上げた。
可哀想に、目は泣きすぎて真っ赤になっているし呼吸もすっかり上がってしまっている。
うーん、ここまで泣かれるとちょっと困るなあ。
内心で苦笑しながらりつの濡れた頬に手を伸ばす。
けれどその指がりつに触れることはなかった。
「ぼ、ぼく…っ…先生よびにいってくる…」
りつがそう言って突然体を離したからだ。
そのまま背を向けてどこかへ行こうとするのを、慌てて引き止めた。
今なんて言った?先生を?呼びに行く?
ダメだと少し強めにりつを叱った。1人で外になんて絶対に出さない。
そう心配する一心から出た言葉だったが、りつはまた泣き出してしまった。
何かしてあげたいのに、僕はどうすればいいのと。
熱でぼんやりする頭で、可愛いなと場違いな想いが胸の中に浮かんだ。
りつは、可愛い。
「じゃあ…、俺のお願い聞いてくれる?」
「ん、きく…っ」
「あそこの1番上の引き出しに、黄色い蓋の薬の瓶があるから持ってきてくれない?あと、コップに水も入れて。」
しっかりと頷いて、キッチンへと向かったりつの背中を確認してゆっくり目を閉じた。
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