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風邪引き-4sideりつ

ゆうじは、本当に辛そうだった。 持ってきた薬を数錠飲んで、ありがとうと笑っていたけど顔は真っ青で手が少し震えていた。 「ゆうじ…ベッド行こう?」 ソファで熱い息を吐くゆうじを、これ以上見ていられなくてもう一度ゆうじの腕を掴んで促すと、今度は少し躊躇ってから頷いた。 「立てる?」 りつの支えを借りながらゆっくりと立ち上がるゆうじ。 ふらつくゆうじの腕を引いて、なんとか寝室まで辿り着いた。倒れ込むようにベッドに倒れたゆうじの枕元にしゃがみこむ。薄らと汗をかいている姿を見て、引っ込みかけていた涙がまた顔を出す。 「寝てればよくなるから。」 ゆうじに撫でられながら、小さく頷き涙を拭う。 「ごめんね。ケーキ買いに行こうねって約束してたのに。」 「ケーキなんていらない。」 ケーキより、ゆうじが元気ならそれでいい。 空いているゆうじの手を握って、今度はりつがその頭を撫でた。体調が悪い時、入院してる時、寝る前にいつもゆうじはこうしてくれるから。 「僕が手繋いでるから寂しくないよ。」 眠れるまでここにいるよ。 ゆうじは少し驚いたように目を丸くしたが、すぐにフッと笑って手を握り返してくれた。 「…優しくていい子だね、りつは。」 眠りに就く直前にぽつりと聞こえたその呟き。 「僕…いい子になれるかな…。」 閉じてしまった長い睫毛に問いかける。 きっと、僕はいい子なんかじゃない。 おとうさんにはずっと嫌われていたし、今だって何も役に立てない。 いい子になりたい。ゆうじに頼るばっかりじゃなくて、ゆうじにも頼られるようないい子に。 りつは立ち上がって、洗面所へと向かう。 そして棚から1枚タオルを取って水で濡らし、固く絞る。 「…っ、よし。」 それからゆうじの所へ早足で戻って、汗ばんでいる額に乗せた。 以前熱を出して寝込んだ時に、同じように濡れたタオルを乗せてもらって楽になったのを思い出したから。心做しかゆうじの眉間のシワが少しだけ薄くなったような気がした。 本当はまだ、ゆうじが悪い病気だったらどうしようって怖くてたまらない。だけどゆうじが大丈夫って言うから、僕はゆうじを信じるよ。 治るまでいい子にしてるからね。 「早くよくなってね。ゆうじ、大好き。」 床に座ってゆうじの枕元に顎を乗せ、小さな声で囁いた。

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