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はじめましての-3
「はじめまして、さくらです。」
「…りつ、です…。」
体の半分以上をゆうじの後ろに隠して、小さな声で挨拶をした。繋いだ手が汗ばんでいて、りつの緊張がこちらにまで伝わってくるようだ。
りつより20センチほど身長が低いさくらは、おどおどしているりつを興味深そうに見ている。
「泣いてたの?」
泣き跡が残るりつの顔を見て心配そうに首を傾げたさくら。
さくらが1歩こちらに近付いて、りつも半歩後ろに下がる。
「…あ、ぁ…と…えっと…っ」
内心ひやひやしていた。仕方がないとはいえ、こんな反応をされたさくらが傷ついてしまったらどうしようと。
けれどさくらはふわりと笑ってりつに手を伸ばした。
「ふふ、だいじょうぶ!さくら意地悪しないよ〜。」
「う、うん…」
「さくらと遊ぼう?」
「え、ぁ…っ」
そのまま、りつが返事をする間もなくさくらはりつの手を引いてソファの方へと向かって行った。その背中をハラハラしながら眺める。
2人はラグの上に座って何かを話し始めた。さくらは笑っているが、りつの表情は固く強ばっている。
あのまま2人にしておいていいものか、声をかけようかと迷っていると後ろから十束に「おい」と呼ばれた。ダイニングテーブルに座っている十束の方を向くと、こちらを手招きしながら先程ゆうじが淹れたコーヒーを飲んでいる。
「大丈夫かな…。ごめん、あの子不安定で何するか俺でもまだ…」
2人の様子を気にしながら十束に歩み寄る。十束はゆうじを見上げてカップを置き、向かい側の椅子を指した。
「お前が1番顔色悪いぞ。まあ座れって。」
「…悪い。本当に俺が1番緊張してるかも。俺の接し方が悪いせいで、りつが他人を受け入れられなかったら、他人に受け入れてもらえなかったらって思うと…」
「お前はちゃんと面倒見てるよ、その辺の親よりよっぽど。俺やさくらに会うなんて1年前じゃ考えられなかった成長だろ?」
「…そう、だな。」
振り返ると、まだ固い表情を浮かべているりつ。けれどこちらに泣きついてくることはない。りつなりにさくらと向き合おうと努力している。
あんなに怯えていたのに。あんなに傷だらけだったのに。
きっともう、あの頃のりつじゃないんだね。
「信じろよ、お前が救ったりつくんを。」
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