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はじめましての-4

30分ほど、2人が遊んでいる様子を気にしつつ十束と取り留めのないことを話して過ごした。 りつとさくらは、2人で顔を突合せながらジグソーパズルに耽っている。それは先日りつとショッピングセンターに行った時にりつが選んだパズル。りつには少し難しかったみたいで、昨日の昼間も半泣きになりながらパズルと戦っていた。 年齢の割にしっかりとしているさくらと、1つのピースをここでもないあっちでもないと相談しあっている2人は、案外打ち解けているようにも見えた。事実、さくらの言葉に頷くりつの表情はさっきより遥かに柔らかくなっている。 優しくて素直なさくらのお陰だ。このままりつと仲良くなってくれたら嬉しいな、と口元が緩む。 そこでふと、冷蔵庫の中にしまってあるケーキを思い出した。十束が来る途中にさくらと選んで、お土産にと買ってきてくれたケーキ。 忘れないうちに、と立ち上がって2人を呼んだ。 「さくちゃん、りつ〜。さくちゃんたちが持ってきてくれたケーキ食べる?」 「たべる〜!」 ぱたぱたと可愛らしい足音で駆けてきたさくらの右手は、しっかりとりつの手を握っていて笑ってしまった。りつも満更ではないようだ。 「りつも?」 こくりと頷いたのを確認して、キッチンへ向かった。 真っ白い箱の中には、宝石のようにキラキラと輝くケーキが4つ並んでいる。 「好きなの選んでね。」 テーブルにケーキを並べて出すと、「先に選んでいいよ。」とりつがさくらに言っていて驚いた。女の子にそんな気遣いができるなんて、やはりりつは優しい子だ。 「りつくんはさくらの横ね!」 「あ、…え、うん…っ」 積極的なさくらは、穏やかなりつが相当気に入ったらしく横並びで座って満足そうに微笑んでいる。 「仲良くなれたか?」 「うん!」 笑顔で頷くさくらに、十束も嬉しそうに笑ってその頭を撫でた。 しかし、ほのぼのとしていた空気はさくらの一言によって一変する。 「あのね〜、さくらりつくんと結婚する!」 「は、ハア!?」 カタン、と手にしていたフォークを落としたのは十束だ。 ゆうじも瞬きをしながら、さくらの言葉を頭の中で何度か反芻した。 “結婚” あまりにも自分とは縁遠い話で、一瞬何を言っているのか分からなかった。 「え、えーと、りつと?結婚?」 固まって何も言えなくなっている十束の代わりに確認すると、さくらはしっかりと頷く。 「うん。りつくんかっこよくて優しいからさくら好き〜。」 「ちょ、ちょっと待て。さくらはパパと結婚するんじゃ…」 「やめた!パパとは離婚する!」 ばっさりと切り捨てられた十束が屍のように項垂れているのが可笑しくて思わず噴き出してしまった。きっとこのくらいの年齢の子ならよくある軽い冗談。明日になればもう覚えていないんだろう。 たかが1時間弱の間にこんなにりつを気に入ってくれるなんて、ありがたいななんて呑気に考えていた。

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