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はじめましての-5

「け、けっこん…ってなに?」 対面の席に座り、黙って話の流れを見守っていたりつが、ちょんちょんとゆうじの手をつついて小さな声で尋ねてきた。 「あー、あのね、」 そういえばこんな話をりつとする機会は今までなかった。一体何から説明しようかと迷っているとさくらが元気いっぱいに話しだす。 「あとね、好きな人とずっとに一緒にいよって約束することだよ!」 「ずっと…一緒に…?」 「うん!…あ、りつくん…さくらとじゃ嫌だ?」 「ううん。嫌じゃない。さくちゃん優しいから好きだよ。」 目の前のやりとりに口を挟む暇もなかった。名前の通り桜色に頬を染めているさくらの表情は、正に恋する女の子そのものだ。 「…天然タラシだ。」 まさかりつからそんな言葉が出てくるなんて。 もしかしたら将来たくさんの女の子を泣かせるかもしれないなあ。 「お前どういう教育してんだ…。俺は認めねえぞ…っ」 隣ではまだ十束が声を震わせているが、ここに彼を慰める人間は一人もいない。 「ゆうじさん、だめ?」 さくらはゆうじに向き直って上目遣いで首を傾げる。 「うーん…」 だめかって…俺に聞かれてもなあ…。一応りつの保護者ではあるけど、りつの人生だし。 相手が子どもだからと言って、適当に答えたりしたくない。 「俺が決めることでもないんだけど…。そうだね、さくちゃんが大人になってもりつのことが好きだったら、また考えようね。」 自分なりに考えたけれど、やはり何か確信的なことなんて言えなくて曖昧な答えになってしまった。 「えー、今がいいのー」 「さくら、我儘言うな。パパでいいだろ。」 「えー、パパー?」 「おい、何が不満なんだよ。」 口を尖らせるさくらと、それを窘める十束。 その様子を微笑ましく眺めて、ふとりつの方へ視線を向けると何かを考え込んでいるのかじっと手元のケーキを見つめていた。 「けっこん…」 「りつ?」 りつがぽつりと何か呟いたのを聞き取れなくて名前を呼ぶと、りつは慌てて首を振る。 「あっ、なんでもない。」 「そう?」 「うん…」 りつが何を考えていたのかなんて、この時のゆうじは知る由もなかった。

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