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はじめましての-7sideりつ

「む…」 困ったように笑って受け流すゆうじを、じとっと見つめた。 ゆうじは、してくれないんだ。 僕と結婚。 「りつ?」 「…」 「いじけたの?」 「…」 ゆうじと目を合わせていられなくて、いい匂いのするシャツに顔を埋めた。 ぎゅっと歯を食いしばっていなきゃ泣きそうだ。 考えてたんだ。ゆうじとずっと一緒にいるためにはどうしたらいいんだろうって。だって今の僕たちに、二人の関係を保証するものは何もない。 結婚したらずっと一緒にいれるって聞いて、本当に嬉しかった。 なのに、ゆうじは違うの?僕とずっと一緒にいてくれないの? 「りつが俺を好きって言ってくれるのは嬉しいよ。」 じゃあどうして。 ゆうじのシャツに涙が吸い込まれていく。 「俺もりつが大好きだよ。今はそれだけで十分。」 ぽんぽんと慰めるように頭を撫でる優しい手。 「…すき、ゆうじ…す、き…っ」 「ありがとう。」 上手く伝わらない気持ちがもどかしい。 好きなんて言葉じゃ足りない。ゆうじが僕の全て。 なんて言えば伝わるの? 僕がたくさん勉強すれば伝えられるの?もっといい子になったら分かってくれる? こんな気持ちは初めてで、分からないんだ。 アスカ先生とも、勿論さくちゃんとも違うこの僕の“好き”は一体どうしたらいいの? 「、すき。」 「うん。」 「だ、いすき…」 「俺もだよ。」 りつはそのまま泣き疲れて眠るまで、ゆうじにありったけの“好き”を伝えた。 はじめましての

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