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第6話

閉ざされたままのカーテンの向こう側から強い夏の陽射しが差し込んでいる。布とガラスを通してもなおギラギラと地を焼く光が外の気温の高さを物語っていた。 せっかくの晴れの休日でも、デートなどと大っぴらに姿を晒せる関係ではない。だがこれではあまりに不健康ではないだろうかと薄くなる意識の中で思いながらも高坂は浅い呼吸を忙しなく継ぐしかない。 背後から貫かれ、揺さぶられた衝撃でシーツに顔を埋める。自分の額や顎から滴った汗と涙の混ざった液体で濡れた布地を噛んでは喘ぎを飲み込んだ。 「…主任。…ねえ、主任、」 じっとりと汗ばんだ背にひたりと押し当てられる胸板もやはり汗でびっしょりと濡れていた。 朝目が覚めてからベッドの上から動いていない。 住吉の部屋のシングルベッドは大の男が2人眠るにはあまりに狭い。枕元のパイプを掴む高坂の身体がずり落ちそうになる度に住吉の手が上司の腰を鷲掴み、引き寄せる。 「ぁ、ッアア…!や、やめ、も…っ、」 「嘘つき」 もう何度射精したかわからない。 ぐしょぐしょに濡れたシーツに付いた膝頭にまとわりつく自分の体液が気持ち悪い。 それでも、嫌だとかやめてとかを口にする事によって更に興奮を煽られる住吉は乾く唇に舌先を滑らせてから、もう既に散々痕を刻んだ高坂の肩を噛む。 「痛…ッ!痛い、から、住吉、…ぁ、住吉くん、」 「痛いったって…、…気付いてます?主任の中、俺が噛む度にぎゅうぎゅう締め付けて来てるんですけど」 歯列が皮膚を裂く度に呼応して欲を締め付けられ、住吉の方も決して十分な余裕を残しているわけではない。それでもその余裕の無さを押し隠し、誰に聞こえるわけでもないが存分に潜めた声で囁きかけると、高坂は強く頭を振って見せる。 「違、違…っ、そんなこと、」 「…そんなに俺の形覚えたいんですか?全部咥えて離してくれませんけど」 反論の余地を無くすかにまた首の付け根に歯を立てる。高坂の身体がびく、と大きく波打ったかと思うと、そのまま痙攣するように身を震わせたが精を吐き出している感触はない。それでも内部から伝わる感覚に、住吉はいよいよ口角を歪めた。 「ーーーああ、」 また、新しい悦びを植え付けた。 熱を持ち震える高坂の陰茎を掴み、乱暴に扱く。痛い程に欲を締め付けられ、住吉も堪らずに高坂の体内に体液を放つ。 「気持ちいいですか?…女の子みたいにイっちゃって」 「ちが、ちがう、女の子、じゃな、」 次第に呂律も回らなくなってきている。 覗き込んだ瞳から、意識が遠ざかりつつある事を察し、顎先を捉えては気付けのように口付け息を吹き込む。うっとりと目を細める淫蕩な眼差しに内心で舌舐めずりをした住吉は、褒めるように高坂の濡れた髪を撫でた。 「主任の身体、どんどんいやらしくなっていきますね」 褒められた自覚のない高坂が、唇の感触を強請るように顔を傾ける。 真夏の薄暗い部屋での1日は、まだ半分を残している。

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