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第10話

「あら?」 子供二人と自分の物と夫の洗濯物を機械に放り込みながら史華が首を傾けた。下着というよりも、着るものに頓着しない夫の下着に見慣れぬ柄の物が混ざっている。型こそ夫が好んで履いている物だが、生地もまだ傷んでいない所を見ると新しい物だろう。ぱちぱちと目を瞬かせてからリビングで子供と戯れる夫へと首を伸ばした。 「ねえパパー?こんなパンツあったかしら?」 妻の問い掛けに夫の背がほんの微かに揺れた。その波と同じくらい小さな間を置いた後に、夫はいつもの笑顔を浮かべる。 「…あ、…外回りで汗かいちゃったから、つい気持ち悪くてその辺で買っちゃったんだよ」 「ふーん?でもこれパパが履くには小さいんじゃない?」 夫は目を合わせない。子供が遊ぶミニカーを手持ち無沙汰に動かしながら軽く目を瞬かせ、また一つ呼吸を置いて口を開く。 「う、うん。間違っちゃった」 「そう、」 パンツ、汚れちゃいましたね。 俺の履いて帰って良いですよ。 夫のその部下の昨夜の言葉など史華は当然知る由もない。納得したようにまた洗面所へと戻り、穏やかな休日の洗濯機がやがて回り始めた。

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