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第17話

汗が滲んで額に張り付いた前髪が邪魔だ。 おまけに身に付けたままの自分のスラックスの布地に囲まれてしまい、その最中の表情が伺えないと住吉はシーツに置いていた指を伸ばして濡れた前髪に五指を差し込む。高坂の眉根がぴくりと揺れる様を見届けてから、指先に微かに力を込めて前髪を掴み、掻き上げた。 「…やらしい顔して、」 口を大きく開き、促された通りに自分の男根を深く咥え込む高坂の目が、住吉の一言に羞恥を深くして伏せられる。普段職場では笑みを絶やさないと言っても過言ではない上品な口元は唾液や、住吉自身から滲む先走りに汚れてしまっていた。 軽く腰を持ち上げ、硬い顎の裏に亀頭を擦り付ける。喉を突かれる感覚に苦しげに眉を寄せる相貌がひたすらに嗜虐心を掻き立てた。 「美味いですか?俺の、」 「っ…、ん、」 男同志はこうするのだと呪文のように教え込み、従わせた。別に弱味など握ってもいないし、脅したりもしていないというのに高坂は驚く程従順で、言われるがままに住吉の熱を頬張り、啜る事を覚えた。 見下ろす高坂の背から腰のラインすら卑猥に写り、住吉は密かに喉を鳴らす。連動するように脈打つ雄の裏筋を舌でなぞられ、思わず小さく呼気を詰めた。 「ッ、…上手になりましたね。主任、」 「んっ、」 髪を掴んだ指を解放し、先程までの力とは裏腹に褒めるようにくしゃくしゃと黒髪を乱す。口淫をさせている最中に髪に触れるとどうにもサドっ気が顔を出すような気がしたが、住吉は本来それ程の嗜虐心は無い。そうさせるのは、一重にこの高坂の身体と従順さ、それとこの逢瀬や行為そのものの背徳感によるものだろうと思っている。 「ーーー男の咥えてちんぽ勃たせてるパパって、すっごいエロいっすね」 わざとらしく、感心したような声音で落とす。 紅潮した高坂の顔が更に歪み、舌の動きが止まる。その隙を縫うように、靴下を履いたままの足の先を上司の下肢の間に滑り込ませて確かにそこにある膨らみに触れ、弄ぶ。 「…っん、んっ、ん、」 もう勘弁してくれ、と言いたげな眼差しが住吉を見上げる。触れる程にスーツの中で張り詰め質量を増す欲と、熱を咥えたまま許しを請う表情は自分しか知らないのだと思うと、どうにもならないような愉悦と独占欲に似た思いが湧き上がる。 「良いですよ。…アンタの顔に、出させてくれたらね」 人のものを汚す優越感が支配する。 離れていく指先を名残惜しそうに目で追う高坂の姿に、次は何を仕込んでやろうかと過ぎる邪念が尽きない。興奮に乱れる吐息を、悟られないように吐き出した。

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