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第20話

高坂の体内の奥深くにじわりと熱が広がった。無遠慮に腰を押し付けたまま果てた住吉が荒い息を吐き出す度に、濡れた髪から落ちる汗の玉が高坂の首元を濡らし、2人の汗が混ざり合う。高坂もまた、吐精後の余韻が強く残る身体を震わせ、霞む視界を晴らすようにきつく瞼を閉ざしては開く。 不意に住吉の指が高坂の頬へと伸びた。 「住吉、くん?」 瞳の奥を覗く目が近い距離になり、鼻先が触れ合う。小さく名を呼んだ唇が柔らかく塞がれ、高坂は反射的に目を閉じる。触れるだけの唇はすぐに離れていき、その呆気なさに驚く高坂の頭がやはり柔らかい力で住吉の肩に抱き寄せられた。 「ーーー、…主任、」 何かを確かめようとしているような声だった。 ぽつ、と呟き抱く腕に力が込められる。住吉の表情は高坂からは伺えない。濡れた髪が重なり合い、重なる胸板の中で鼓動が同じリズムで動いていた。 動きを封じられ、いつもの手順とは違うその動作に戸惑う高坂が軽く身動ぎすると、体内から熱を失った住吉自身が抜けていく。溢れる白濁に眉を寄せる気配に、住吉が我に返ったように両腕を解いて起き上がった。 「住吉くん、」 「シャワー、してきます」 普段と変わらない声と横顔だけを残し、青年の背がシャワールームへと消えていく。 ベッドに仰向けに転がされたままの高坂はしばし呆然としたように天井を見上げるも、今の出来事を反芻してにわかに耳を熱くさせる。 「…なんで、」 普段はしないようなキスと抱擁だった。 乱暴なだけではなく。 あんな風にされてしまったら。 「…勘違い…するだろ」 これは遊びでは無いのかもしれない。 あってはならない感情が生まれそうになってしまう。 地盤がぐらつくような感覚に陥る。 唇に触れた余韻が、いつまでも残り、消えていかない。 いけない事をしている。 その自覚すらかき消すような感情が生まれつつある気配に、高坂は自制するように下唇を噛み締めた。

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