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第22話

住吉の両脚を跨ぐ形で立たせたままの膝が震えている。もうとうに限界を超えていることは震える膝や、腹に付きそうな程に頭を擡げ、身体が揺れるに伴って揺れて先走りを散らす高坂の欲を見れば明確だった。 双丘を揉まれ、尻臀を割られ、後孔に指を押し込まれて内側を掻き回される度に滲む涙が住吉の髪や、時折上げる顔を濡らす。快楽と羞恥に歪み切った高坂の顔をちらりと見遣り、執拗な程に胸板の突起を吸い、歯を立てる。赤く充血して主張するそこの輪郭を舌でなぞり、音を立てて吸い上げると、高坂の形の良い顎が仰け反った。 「住吉、くん、…も、お願、…っ、」 「何が…お願いなんです?」 涙混じりの声に素知らぬ振りをして2本まとめた指で内壁を抉る。悲鳴と共にがく、と崩れ落ちそうな身体を支えるべく、住吉の肩に乗せられた高坂の手に力が籠る。 もっと奥を抉られたい。指2本だけでは足りない部分を埋めてほしい。そんな風に思うことを自分ではないという思いも、消えない羞恥心も掻き消される程に身体の中を擦り、快楽だけで満たしてほしい。 そんなはしたない思いを伝えるように高坂の方から唇を重ねると、差し出される舌先を必死に吸っては住吉の相貌を覗く。涙で霞む視界に映る、自分より年下の部下のギラついた眼差しに反射的に期待する身体は体内からぞくぞくと震え出すようだった。 お願い、ともうほとんど泣きながら懇願する声に住吉がほんの微かに目を細める。後孔から指を抜き、高坂の両手から逃れるとそのままベッドの上に仰向けに身を倒した。 「自分で挿れてみてくださいよ」 「ーーーえ…」 高坂の相貌にたちまち戸惑いの色が広がった。既に勃ち上がった陰茎に指を添えて支えて見せる住吉は普段とさほど変化の無い、愛想の薄い顔で高坂を見上げる。 「出来るでしょ?自分が欲しい所に自分で挿れて見せてくださいよ。主任」 「っ…や、だ…出来な…、」 住吉の示す行為を理解した高坂の耳が熱を帯びる。その行為や体位の卑猥さに想像を巡らせては激しく首を振ってみせるも、今まで住吉の指を咥え込んでいた後孔は確実に物足りなさを主張して収縮している。膝立ちのまま拒否の姿勢を露わにする高坂を見上げた住吉は、ふうん、とつまらなそうに鼻から息を逃した。 「なら良いですよ。別に。俺は1人で抜いて来ますから。主任も1人でそれ始末してくださいね」 「や…、……出来、る、から…っ」 萎えないままの高坂の熱を顎で指して淡々と告げつつ住吉は起き上がろうとする。動作と言葉の意味を飲み込んだ高坂が先程よりも慌てて強く首を振り、住吉の手首を取った。 緩い力で握られた手首に視線を向け、住吉が再びベッドへと身を倒す。その姿を見た高坂がおずおずと膝立ちの姿勢のままで住吉の下肢に跨った。 片手で住吉の屹立に触れ、そっと握る。背後を確かめるように振り返ると、自分の双丘と住吉の硬い先端を合わせるように位置を調節し、やがて双丘の奥の柔らかく解れた後孔に熱が触れた。 「ーーーん…ッ、ぁ、あ…、」 「っは…、」 高坂がゆっくりと腰を落とし始める。 住吉の両手は高坂の大腿に伸び、支えるように添える。後孔にあてがった熱、先端の傘を飲み込むと肉輪を広げられる感覚に高坂がびくりと肩を震わせる。それでも身を沈めることは中断せず、住吉の熱を扱くようにして肉壁で包み込んでいった。 「ァ、や…、奥、当たっ…あ、」 「ふ…、えっろい…。力抜いたら入っちゃダメな所まで入りますよ…」 限界まで腰を落とし、奥深くを擦られた高坂がまた喉を反らして悶える。見上げる住吉の目には高坂の赤く膨らんだ胸の突起や、天を仰いだままの欲、快楽に歪む相貌の全てが映り、その卑猥さと雄を包む熱さに浮かされて恍惚と呟いては渇く唇を舌先で舐め濡らした。 ぽろぽろと零れる涙を拭う意識はとっくに飛んだ高坂がそんな住吉を見下ろし、喘ぎ混じりの懇願を口にする。 「住吉、くん、…もう、っ、動けない、から、」 「…じゃあ、次は自分で動いてくださいね」 ぶるぶると震える膝頭や大腿をちらりと見下ろし、限界だろうと柔らかい声を投げかける。触れた大腿を支えにして下から軽く腰を突き上げただけで、高坂の身が大きく跳ね上がり頭を持ち上げた欲から少しの白濁を噴き出した。 「や、っああ…!あ、あ、」 「ほんと…いやらしいですね…主任、」 果てた余韻など気に留めることもなく下から小刻みに突き上げては囁き、吐精の余韻に浸ることを許されず、顔を歪めて揺さぶられるがままになる高坂を見上げる。 このどうしようもなく淫らな姿は自分しか知ることがないのだ。そう思うと、住吉の胸が幾度となく湧く支配欲に満たされた。部下である自分が上司である男の身体をこんな風に作り替えている。ただその事だけが若い住吉の欲を奔らせる。 がくがくと揺さぶられ、住吉の腹に手を付いた高坂がぐちゃぐちゃになった顔を上げ、強請るように唇を開いている。そこからだらしなく零れた唾液に惹かれるように身を起こした住吉が、胸板を合わせて両手で高坂の身体を抱き締め、今夜初めて上司を甘やかすように、柔らかく唇を重ねた。

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