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第37話
昼食前にフロアの手洗いに寄った住吉は先客の姿に片眉を持ち上げた。同じ目的を持って部屋を出てきたらしい高坂が今まさに用を足そうと小便器の前に立っている。スラックスの前で手を動かす高坂が住吉の存在に気が付いた。
「あ。お疲れ様。住吉くん」
「お疲れ様…っす、」
ぺこ、と小さく頭を下げる住吉が横目で高坂を見遣りながら歩みを進め、隣の便器の前に立った。さり気なく肩を並べ、スラックスの前を下げようとした住吉がはっと気が付く。高坂は用を足す時軽くベルトを緩めるタイプだ。住吉の思考があらぬ方向に飛んだ。
ーー今日は水色。
高坂の腰にさっと手を伸ばす。油断し、文字通り緩んだスラックスの履き口に指を突っ込んで中を覗き込んだ。
「ーーな、何!?」
「………正解」
住吉の目に高坂の水色のボクサーパンツが映る。
人が選んで購入した下着だろうが、家庭の洗濯事情があろうが、高坂の下着のルーティンを把握するくらい容易いことだーー。
もそりと呟いた住吉が得意げな顔のまま高坂から指を離して便器に向かう。どことなく暴漢に襲われたような心地に陥る高坂が、困惑して眉を下げつつ用を足し始めた。
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