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vanilla(手塚×不二)

「いい匂いだな」  不二の部屋に入った早々、すん、と鼻をすすって手塚が呟いた。 「バニラのフレグランスなんだ」 「お香、か?」 「そう。姉さんが焚くといいよって言ってたから」  確かに、学習机の上に見慣れないアロマポットが置いてある。占い師だという不二の姉、由美子の助言は良く当たる。手塚は納得して頷くとベッドに腰掛けた。 「じゃあ、はい手塚」 「なんだ?」 「もちろん、誕生日プレゼントだよ。開けてみて」 「ああ……」  促されて包みを解くと、何やら布の巾着らしき袋包みが一つ。 「手塚の誕生花、金木犀だろ?だから、金木犀の匂い袋にしたんだ」  ジジ臭かったかな?と苦笑しつつ首を傾げて見上げたが、手塚は満更でもない表情をしていた。 「いや、気に入った。ありがとう、大切にする」 「うん。匂いが薄くなったら、アロマオイルを垂らしてみてもいいと思うよ」 「分かった」  滅多に他人に見せない笑顔で、手塚は再び頷く。確かにアロマは自分には縁遠いものの一つだが、不二がいいと言うからには、きっといいものなんだろう。 「さてと、ねぇ手塚」 「なんだ?」 「今日、うち誰もいないんだよね」  不二の華奢な腕が、するりと手塚の首に回った。 「もう一つプレゼントあるんだけど、いるかい?」  不二の誘いに、手塚は黙って口付けた。 END 手塚誕2012。 誕生花は3つづつあるみたいで、10月7日の誕生花は金木犀(キンモクセイ)・紫苑(シオン)・樅(モミ)らしいです。諸説色々あるので、辞書によっては若干の違いもあると思います。

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