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ヒメガタリ。(跡・宍・岳)

 部活が始まるほんの少し前。 「なあ、」  ふと、跡部が口を開いた。部室には彼の他に岳人と宍戸しかおらず、他のメンバーはコート整備に向かっていた(ジローは恐らくどこかで寝ているだろうが)。 「お前等さ……あいつらとどんな付き合い方してるんだ?」 「「……はあぁっっ!?」」 「珍しいじゃん。どうしたんだよ、跡部」  あんぐり開いた口が塞がらない二人。普段、決して色事には首を突っ込まない跡部から放たれた意外な言葉に、熱でもあるのではないかと疑ってしまう。 「いや、その……」  ボールを手中で遊んでいた岳人とラケットを指の上に立てていた宍戸が同時にそれらを落とした。 「その……同じ同性を恋人に持ってるし……どんな感じなのかと……」  跡部の顔が少しづつ赤くなっていくのは気のせいではないだろう。 「侑士が浮気したとか?」 「それは絶対ない!! ……と、思う……」 「じゃあ忍足に何かされたか?」 「何か……いや、でもそれはいつものことだし……と、とにかく聞きたかっただけだ」 「ふーん……まあいいけど? ……じゃあ俺から。日吉はすっげー奥手でさ、誘ってもなかなか乗ってくれないのな」 「え、意外」  宍戸が驚いた表情を浮かべる。跡部も相槌をうつ。 「珍しいな」 「だろ!? 何かやりそうじゃん? でも渋るんだよ」  ため息をつく岳人に跡部は苦笑する。 「やりすぎなんじゃねえの?」 「違うって! 週一しかしてねぇし、前はもっと少なかったんだよ! だから『そんなんじゃ下剋上は無理だ』って言ってやったんだよ」 「あいつも分かりやすいな。激ダサ」 「そういうお前はどうなんだよ」 「そうだよ宍戸! あのでっかい犬じゃん?」  見下されてるみたいですっげーやな感じなんだけど、と向日は愚痴を溢す。つられるように苦笑を漏らして宍戸も頷く。 「確かにな……『宍戸さん、宍戸さん』って、近くで見てるこっちがうざくて気分わりい……しかもすぐサカる」 「でも好きなんだろ?」 「……ああ、まあ……大きいし、オレに持ってないモン持ってたりするし、色々いい所はあるんだけど、な……」  赤くなりながら呟く宍戸に、向日は脇腹をこづきながら茶化す。 「すっげーいいパートナーじゃん! お互い分かり会えるってすげーよな。オレ、侑士にちょっと頼りすぎたかなーとか思うもん」 「あいつは元々シングルスの才能があるからしょうがないだろ? ま、テメーの体力が持ってたら、あいつが一人で戦うこともなかっただろうがな」 「くそくそ跡部ーお前はどうなんだよ! オレ達の話を聞くだけ聞いといて、自分の話はしないつもりかっ? 侑士とはどうなんだよ?」  向日の一言に、跡部は一瞬睨み付けるが、すぐに視線を反らした。先ほどよりも顔の赤みが増している。 「跡部?」 「……何か、恥ずかしくなってきた……」 「……は?」 「何だよそれ! 人の事、根掘り葉掘り聞いといて!」 「いや、でも……何て言うか……」  フリーズ。 「大人、なんだよ……」 「へ?」 「大人?」 「大人っつーか、変態っつーか……確かに眼鏡外したらかっこいいし、普段他人(ひと)には見せない表情とかも見せるし、……セックスは上手い上にエロいけど……」 「それが忍足だろ?」 「……まあ、」 「いいんじゃね? 跡部に色々尽してると思うけど?」 「そうか?」 「うん」 「つーかさ、跡部と付き合ってから、侑士のヤツ女遊びなくなったんだよ」 「そうそう、自信持てって!」 「……ああ」  宍戸が跡部の肩を叩くと同時に、部室のドアが開いた。 「コートの整備終わりましたよ」 「ウス」 「景……跡部、部誌終わったん?」  忍足達だ。 「あー、まあ、大体は。メニューだけ後で書くから」 「ほな、待っててもええ?」 「好きにしろ」  二人の会話に、宍戸と向日はこっそり目配せして苦笑した。なんだかんだ言って、跡部が忍足の事を好きというオーラが丸分かりだ。 「練習するぜ……全員、アップ開始」  レギュラーに告げるその顔は、まだほんのり赤かった。 END 段落下げも三点リーダーも知らない時に書いたもの。再UPにおいて書き直しました……恥ずかしい(笑)これ以降、同人始めたての産物なので今以上に拙いです。

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