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頂点の掟(真田×幸村)
「良かったな……体はもう動かしてもいいのか?」
手術が成功して、体力も回復、そして退院の日。真田は幸村の退院の手伝いに来ていた。
「ああ……ありがとう真田。来て貰ってすまない」
「何を言う、俺とお前の仲ではないか」
ロッカーの中身をベッドの上に出しながら真田は言った。手塚と同じく、表情があまり変わらない彼には珍しく微笑んだ(と言っても、その違いが分かるのは幸村だけなのだが)。
「それより幸村……俺のほうこそすまない。関東大会ごときで優勝を逃してしまった。一年に負けるとは……たるんでいたな」
「そんなことないよ」
きつくコブシを握り俯く真田の体を、幸村は後ろからそっと抱きしめた。
「確かに、俺たちは王者として負けは許されない。でも、二年も頂点にいると、追うことを忘れるんだ」
「幸村……」
「だから、たまにはいいんだよ。俺たちは次から挑戦者……それも悪くない」
「……ああ」
真田が後ろを振り返れば、幸村は優しく微笑んだ。
「ねえ、真田。全国で彼らに借りを返すのもひとつの手だと思うんだ。腕が落ちるのは良くないけど、全国で優勝すれば、俺たちの実力も認められる」
「……すまない」
「だから謝るなって」
「す……ああ」
「……ふふっ」
「な、何がおかしい」
「なんでもない。さ、早く帰ろう」
真田の体から離れると、ベッドの上のものを鞄に詰めていく幸村。真田が振り返れば、その表情はどこか物悲しく見えた。
「幸村」
「ん?」
「必ず……勝とうな」
「なんだい今更……当たり前だろ?」
ふわりと笑う彼は、花のように見えた。
END
幸村のキャラ崩壊。
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