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第12話 にーちゃんのからだ

 にーちゃんはポツリポツリと話してくれた。弟が可愛くてたまらないと思っていたハズなのに、いつの間にか、それは弟に寄せる気持ちではなくなっていたのだと。  でもこの子は僕の弟で、男同士だ、そんなの間違ってる。万が一この不埒な想いが通じたとして、それが社会的に認められる幸せな事だとは思えない。アキトには幸せになって欲しい、その為にも、僕は良き兄に徹するべきだし、この気持ちは生涯隠し通すべきだ。  まだ若かったにーちゃんは、そう考えたらしい。 「なのにあの日……アキトが、あんな事してきて……ぼ、僕がどれだけ動揺したか判るか? しちゃダメだって、今すぐ引き剥がさなきゃって思うのに、身体が動かないんだ、だって僕はずっと、……ずっと、アキトとあぁしたかったから……」  にーちゃんは顔を真っ赤にして俯いてる。髪の合間から見える耳まで赤い。にーちゃんは今、何年も隠してきた本当の気持ちを、告白しているんだ。 「こ、これ以上近くに居たら、自分を抑えられない、アキトの人生を間違えさせるかもしれない……って、そう考えたら怖くなって、それで……僕は、逃げたんだ、アキトから……ア、アキトの、将来の、為を、思って……」  ほら、判るだろ、僕はアキトに迷惑したわけでもないし、嫌いになったわけでもない、でも、近寄られると困るんだ、だって自分を我慢させるのにも限界が有るし、もう、その、アキトの事、ただの弟だなんて思えなくて、それで家を出たんだ、そしたらアキトも安全だし、僕のほうも気持ちが変わって落ち着くかと思って……。でも、ダメだったんだ……。アキトの事、とてもじゃないけど忘れられなくて、むしろ会いたくてたまんなくて……。  にーちゃんは今までになく饒舌だった。恥ずかしいのか、ずっと耳まで真っ赤にしたまま、心配になるぐらい俯いて、それでも今までずっと我慢してきたタガが外れたのか、告白は止まらなかった。 「何も知らないアキトの母さんが、アキトの写真を送ってくれるんだ、それを見ては幸せな気持ちと切ない気持ちが一緒になって、胸が苦しかった。七瀬さんはよく相談に乗ってくれたよ、色々話したら楽になった、でも、会いたい気持ちも、会っちゃいけないって気持ちも、変わらなかった……だから……」  だから、僕の所にアキトが来た時、本当に頭が真っ白になったよ。にーちゃんはそこで大きな溜息を吐いて、黙った。それはきっと、めちゃくちゃ困ったんだろうなあ、と思う。会っちゃいけないと思っている相手が家に来たなら、どうするか悩んだろうし、しかも泊めてくれって言うんだから、きっと混乱しただろう。でもそんなに大事な”弟”だったから、”良き兄”として、追い返す事も出来なかったんだ。  そう考えたら、にーちゃんはきっと臆病で言い訳がましくて、優柔不断な普通の男なんだなって思った。おれはにーちゃんに嫌われるのが怖かったけど、それはきっとにーちゃんも同じだったか、それ以上だったんじゃないかな。だから、会っちゃいけないのにって、徹底出来なかった。本当に距離を取りたいなら、あの時おれを家に入れちゃいけなかったんだ。だけど、にーちゃんには拒めなかった。  行動は心の現れだ。考えて作られる言葉より、行動の方が素直で本質的なものらしい。つまり、にーちゃんの中で、弟の為を思って距離を置くっていう取り決めが、弟を部屋に入れるっていう行動に変わってしまったなら、本当はそうしたかったんだと思う。  きっと、たぶん。にーちゃんはどう言い訳しても、どんなに戒めてもどうにもならないぐらいに、弟の事が好きなんだ。 「……にーちゃん」 「ア、アキトは、悪くない。あんな事したのも、若気の至りだと思うし、僕は……、僕は、血は繋がっていないとはいえ、弟を好きになってしまった、へ、変態なんだ、だ、だから、いやでも、だからってアキトを襲ったりなんてしない、安心してほしい、それが抑えられるぐらいの理性は有るから、だから早く住む家を探して……」 「にーちゃんってば」  俯いてるにーちゃんの顔を覗き込む。にーちゃんと目が合った。恥ずかしそうな、泣き出しそうな、不安そうな、見てるこっちがたまんなくなる表情をしていたから、またぎゅっと優しく抱きしめてあげる。 「ア、アキト、話聞いてたのか、ダメなんだ、僕は……」 「おれもにーちゃんの事、好きだよ」 「……っ、そ、それは、嬉しいけど、でも、あのねアキト、僕の好きは……」 「にーちゃんにキスしたい」 「――っ、ア、アキトッ」 「ディープなやつだよ、あの時みたいな。舌を絡めて、口の中を舌で犯すの。それで、にーちゃんを裸にして、ゆっくりじっくり開いて、そのままセックスしたい。気持ち良くしてあげたい」 「~~っ、ア、アキト、何言って、」 「にーちゃんも、したいでしょ?」  そう言ってまた顔を覗き込むと、にーちゃんは目を開いて、でも首を横に振って「からかうなっ」って言う。本気だよ、って一言返すと、にーちゃんはまたしばらく硬直してから、ブンブン首を振る。 「ダ、ダメなんだ、僕達は兄弟で、」 「血は繋がってないよ」 「男同士で、」 「そんなのどうでもいいって、さっきにーちゃんが言ったじゃない」 「いや、そ、それは、これとは、」 「一緒だよ、おれとにーちゃんが幸せなら、形なんて関係無いよ」 「だ、だめだ、だってアキトはかわいい女の子と夫婦になって幸せに暮らすんだ」  それがにーちゃんの幸せの理想像らしい。困ったもんだ、それ以外に幸せが無いと思ってるのかな。 「好きな人と想いが通じるのが、今一番の幸せだよ、にーちゃん。おれはにーちゃんに幸せになってほしい。にーちゃんはおれと両想いなんだから、二人で付き合ったら、二人とも幸せで丸く納まるじゃん」 「ア、アキト、それは、違う」 「何にも違わないよ!」  いつまでも煮え切らないにーちゃんに思わず詰め寄ると、にーちゃんは身を縮こまらせて、困ったようにおれの顔を上目遣いで見上げて来る。こんなにーちゃんは知らない。まるで子供みたいだ。聞き分けのない子供。 「ねぇにーちゃん、今まで自分の気持ちを隠して、押し殺してきたから辛かったし、それで時々ああやって気持ちの欠片みたいなのが出て、雨の中追いかけっこする事にもなっちゃったんでしょ。じゃあこのまま同じ事を続けてても、ずっと辛いだけなんだよ? 今まで辛かったなら、苦しかったなら、これからは変えなきゃ、ダメじゃん、ずっと辛いだけだし、にーちゃん幸せになれないじゃん、そんなのヤだよ。大好きなにーちゃんが辛いのに我慢してばっかりなんて、おれはヤだ」 「アキト、でも、」  それでもまだ何か言おうとするにーちゃんの頬を、両手で挟みこむ。にーちゃんはびくっとしておれを見上げる。不安そうなのに、顔は真っ赤のままで、この後何をされるか理解してるみたいだった。だから、そっと口付ける。三年ぶりのにーちゃんの唇は、やっぱり柔らかい。啄ばむように、ちゅっちゅって何度か口付けても、にーちゃんはぎゅっと目を閉じてるだけで、抵抗はしなかった。  少しして体を離してみると、にーちゃんは涙目になっておれを見ていた。 「にーちゃん、やだった?」 「……」  にーちゃんがふるふる、小さく首を横に振る。 「もっとしたいって、思わない?」 「……」 「にーちゃん」 「……お、もう……」  にーちゃんが消え入りそうな声でそう言う。ああ、なんて可愛いにーちゃんなんだろう。もう辛抱たまらなかった。ぎゅっと抱きしめて、またキスをする。口が離れる度に、にーちゃんは何かを言おうとしたから、開いた唇の隙間から舌を潜り込ませる。絡めると、おずおず応えてくれる。二人の舌と唾液が絡み合って、気持ち良い。  時々呼吸の為に離れて、またすぐ唇を重ねる。次第ににーちゃんも受け入れてくれるようになって、その舌を吸い上げたりしていると、お互いに息も上がってきて、頭も回らなくなってくる。にーちゃんはそれでも緊張したように体を縮こまらせていたけど、何度も何度もキスをしながら、髪を撫でたり、耳にそっと触ったりしていると、どんどん力が抜けてきて、くったりソファにもたれかかる。そんなにーちゃんに覆いかぶさるようにして、貪るようにキスをしても、抵抗はされなかった。にーちゃんなりの諦めがついたのかもしれない。  しばらくして少し身体を離すと、にーちゃんはとろんとした顔でおれを見上げて来る。そんな表情をされたら、それこそ困る。抑えなんてきくわけないじゃない。 「……にーちゃん、続き、して、いい?」  あの時は。終わってから、泣きながら突き飛ばしてきたし。一応、確認しておく。にーちゃんは少しして、コクンと小さく頷いてくれた。だから、にーちゃんを怖がらせないように、逃げないように、優しく服の中に手を忍び込ませる。そろり、と手を這わせると、にーちゃんはくすぐったそうに身を捩ったけど、嫌がったりはしなかった。  時々「アキト」って名前を呼んできたけど、続く言葉は無くて、恥ずかしそうに片腕で顔を隠して、もう片方でおれの腕を握っていた。その手も制止するというよりは、不安だから触れてる感じで、悪い気はしなかった。  ゆっくりと手を下に持っていく。あの時みたいに、にーちゃんのスウェットに手を入れてみても、びくっとして、それから顔を反らしただけで。にーちゃんのソコも少し固くなっていて、いとおしくてたまらない気持ちになった。 「にーちゃん、擦りっこしよ……?」  耳元で囁くと、にーちゃんは震えて、それから返事の代わりにぎゅっと抱きついて来た。これではにーちゃんはおれに触れない。つまり、あの時みたいに、おれが擦り合わせてあげないと。  そうなると判っていて、にーちゃんがこうしてるなら、とんでもないエロいおねだりをされてるんだなって思った。  おれもスウェットをずらして、ちょっと硬くなったそれを取り出す。にーちゃんはあの時と同じでびっくりしたみたいに目を丸くしたけど、また俺の胸に顔を埋めて、それきり動かなくなった。可愛い。こうやって子供みたいに甘えたりもしたかったろうに、ずっと我慢してきたんだろうなあと考えると、可愛くて、同時にかわいそうで、にーちゃんの髪にキスをしながら、二人のをそっと引っ付ける。熱い、と思った。  ゆるゆるとそのまま扱き始めると、にーちゃんははぁ、と切ない吐息を漏らした。にーちゃん、にーちゃんって呼びながら擦ったり撫でたりしていると、だんだんお互いに濡れて来て、気持ち良さがどんどん増していく。くちゅくちゅいうのが恥ずかしいのと、にーちゃんも気持ち良くなれてるんだって判って嬉しいのとで、夢中になってしまう。先端を優しく撫でてみると、腰が砕けそうなぐらい気持ち良い。にーちゃんのもしてあげると、「アキ、ト」ってふるふるしながら顔を上げた。涙が滲んで目はうるうるしているし、唇からは熱い息とおれの名前が漏れるし。すごく、キた。こんなの我慢出来るもんか。 「ん、ア、アキ、……ッ、んーっ!」  にーちゃんの唇をキスで塞いで、舌を絡ませながら、愛撫を激しくすると、にーちゃんはぎゅっと目を閉じて、おれにしがみ付く手に力を込める。そのまま角度を変えつつ何度もキスしながら、二人で絶頂を追い求めた。にーちゃんは時々苦しげに眉を寄せて、「も、もう」って途切れ途切れに訴えて来る。そんなの言われなくても判ってる。にーちゃんの脚はがくがく震えていたし、おれもそろそろ限界だった。  にーちゃんの身体を半ば抑えつけるみたいな姿勢になりながら、弱い先っぽや裏筋を撫でて、今までより小刻みに速く扱くと、にーちゃんは頭を振って、俺の肩口に顔を埋めて、「も、だめ、だ……ッ」って泣きそうな声で言う。だからおれも、「一緒にイこ、にーちゃん」って耳元で囁いた。それで、「あ、ぁっ!」ってにーちゃんが甲高い声を上げて、びくびくしながら出したから、おれも釣られて、手の平に出した。  にーちゃんはハァハァ荒い呼吸を繰り返しながら、おれにしがみついている。かわいくってたまらない。おでこの髪を分けて、キスをしてあげる。にーちゃんはほんの少し俺の顔を見上げて、また俯いて、おれの胸に顔をすり寄せてくる。甘えてるんだ、と思うと、嬉しい。あの時みたいに、泣いたりも、突き飛ばしたりもしない。受け入れてもらえたんだ。幸せな気持ちでいっぱいになって、もっともっと確かめたいと思って、身体をずらしてにーちゃんの唇に何度もキスをした。そのうちまたディープなキスへと変わって行くと、おれはまた身体に火がついてしまう。 「……にーちゃん、この続きは、しても、いい……?」  尋ねると、にーちゃんはびくっとして、それから震える声で「でも、兄弟で、」って今更言う。 「だから、血は繋がってないじゃない」 「だけど、」 「でも、も、だけど、もダメ。……にーちゃんは、したくない?」  にーちゃんはしばらくして、また顔を真っ赤にして、目をあちこち泳がせた後で俯いて、「した、い」って小声で答えた。反則だと思った。 「じゃあ、にーちゃんどっちがいい? 入れる方と、入れられる方。おれどっちも勉強してきたから、大丈夫だよ。あぁでもローションとかゴムとかいるよね、今からすぐはムリかな……」  そう言うと、にーちゃんはぼそぼそと、受け入れる方が大変そうだから、アキトにさせるわけにはいかないよ、あと、そういうのなら持ってる、って答えた。 「え……ローションとか、ゴムとか有るの? にーちゃん、使った事有るの?」 「いや、その……す、鈴音さんが、持ってたほうがいいって、くれた……」 「……それって狙われてたとか、セクハラとかじゃなくて……?」 「鈴音さんは良い人だよ、ちょっと変わってるだけで……」  それで、その、つ、使うなら、部屋から取ってくるけど……。  にーちゃんは恥ずかしそうにそう言った。にーちゃんがその気になっているうちに話を進めないと、またでもでもだってになりそうだったから、「お願い、にーちゃん」って答えた。  にーちゃんはローションとかスキンとかを部屋から持って来てくれて、それから部屋の明かりを落とそうって言った。雨が降ってるとはいえ、まだ昼間だから外は少し明るい。電気を消しただけでは足りないらしく、にーちゃんはカーテンも閉めた。  ホントは明るいところでじっくりにーちゃんを見たかったけど、のろのろと服を脱ぎ始めたにーちゃんのシルエットがぼんやり見えるのも、それはそれでエロかった。にーちゃんの細くて小柄な身体は白くてしなやかで、暗い中でも色っぽく見えた。「アキトも」って促されて、ようやくおれも服を脱ぐ。にーちゃんが丁寧に畳んで床に置いていたから、それを真似した。  それから二人でソファベッドに乗る。にーちゃんは恥ずかしいらしくて、おれの布団の中に隠れてしまったから、おれも中に入った。横向きに一緒に転がって、にーちゃんの身体に障る。なめらかで、すべすべしてて、あったかい。  お互いにキスをしながら、手探りでにーちゃんを撫でていく。確かそういうサイトには、触れるか触れないかのタッチがいいと書いてあったから、そんな感じで触れてみる。にーちゃんはくすぐったいのか、時々「んっ」と小さく声を出して震えたけど、制止したりもしない。そろりと手を下へ下へ動かしていく。わき腹を掠めると、にーちゃんは身を捩って、ベッドに顔を埋めた。    男同士でセックスするためには、慣らさなきゃいけない。でも横向きじゃどうにもしにくい。身体を起こして、にーちゃんの被っていた布団を剥がし、脚の間に入る。にーちゃんは察して仰向けにはなってくれたけど、やっぱり恥ずかしいらしくて、腕で顔を隠している。初心だなあ、と思った。可愛いと思うし、同時に、恥ずかしいなんて思えないぐらい気持ち良くしてあげたいと思った。まぁ、初めてじゃ、何かと難しいらしいけど。  手の平にローションを垂らして、少し温めてから指に絡めて、そっとにーちゃんの最奥にしのばせる。にーちゃんは流石に「そこ、」って少し身を捩ったけど、それだけだ。入口をぐにぐに指で押してみて、少し慣れてきたところで、ぐっと指を押し込む。意外とすんなり入った。にーちゃんもびくっと一度震えただけで、痛くはないみたいだった。にーちゃんのナカはきゅうきゅう締め付けて来るから、慣らして広げるように指を動かす。熱くて、きっと入れたらすごいんだろうな、って思うとおれも興奮してきた。でも焦っちゃダメだ。出来るだけにーちゃんに痛い思いなんかしてほしくない。だから、じっくり時間をかけてほぐしていく。 「にーちゃんは、ここ、自分で触った事は有るの?」  試しに聞いてみると、にーちゃんは顔をふるふる横に振った。そっか、とそれだけ返して、二本目を押し込む。にーちゃんは「んん」と少しくぐもった声を漏らした。少しキツくなってきたので、ナカをぐにぐに動かしてみたり、少し入り口を広げるように動かすと、少しづつ柔らかく受け入れてくれる。時々にーちゃんはくぐもった声をもらすようになった。それは喘ぎ声とかではなかったけど、痛そうでもなかった。  確か男もナカで気持ち良くなれるんだったな、と思い出す。少し入り口側に、イイところが有るんだったと思う。くいくい指を動かしてナカを探ってみると、しばらくしてにーちゃんが「ぅ、」と少し声音を変える場所を見つけた。もしかして、と思ってそこをこねてみると、にーちゃんが「アキト」って名前を呼んで身を捩らせた。ココかもしれない。  ソコを重点的に撫でてあげながら、慣らしていく。やがて三本目が入る頃には、にーちゃんは呼吸を荒げながら震えていた。一度出して力を失っていたモノが、また熱を取り戻しているのが判って、嬉しくなる。にーちゃんは確かに、気持ち良くなってくれてるんだと思った。 「にーちゃん、好き……」    腕で顔を隠したままのにーちゃんに、改めて覆いかぶさる。指を抜くと、にーちゃんは「あっ」と甲高い声を出して、慌てたように口を押さえた。そういうのも可愛いけど、もう我慢の限界だ。にーちゃんの脚を抱え上げて、ゴムをつけたおれのを当てがうと、にーちゃんは流石に身を強張らせた。 「にーちゃん、ムリそうだったら言ってね……」  そう耳元で囁いて、にーちゃんのナカに入る。一番太いところが通るまで、にーちゃんは「く、ぅ」って苦しげな声を出していたけど、止めるようには言わなかったから、そのまま少し前後に動かしたりしながら力を込めると、あとはすんなり奥まで入る事が出来た。にーちゃんの中は熱くて、きゅうきゅう締め付けて来て、すぐにも出してしまいそうなぐらいだったから、必死で耐えた。 「にーちゃ、キツい……っ」  思わず眉を寄せてそう言うと、にーちゃんは「わる、ぃ」って呻くみたいに言って、それで一生懸命深呼吸して、力を抜いてくれる。それで締め付けも少し緩くなった。改めてにーちゃんを見ると、にーちゃんは涙をこぼしていた。泣いているってわけじゃないみたいだけど、フゥフゥ呼吸しながら涙を流しているにーちゃんがどうにもかわいそうで、思わず目尻にキスをした。  しばらくそうしてにーちゃんが落ち着くのを待っていると、にーちゃんはのろのろとおれの背中に手を回して来て、「もう動いても、いいよ」って言う。そんなおねだりは反則だ。すぐにでもむちゃくちゃに動きたいのは我慢して、「ホントに大丈夫?」って聞いてみると、にーちゃんはコクコク頷いた。  お言葉に甘えてゆっくり動き始めると、にーちゃんは「ん、んん」って眉を寄せた。でもそれは痛いわけじゃなさそうだった。ぐっと奥まで押し入って、ゆっくり抜きかけると、「あ、ぁ、っ」って高い声が思わず出てしまうみたいで、またにーちゃんは片方の手の甲で口を押さえて、目をぎゅっと閉じてしまった。  我慢する余裕なんて無いぐらい気持ち良くさせてあげれたらなあ、と思う。それにはそういうやり方の勉強もしなくちゃいけない。無理矢理手を剥がしたりするのはやっぱり嫌だ、にーちゃんが自然とそうなるようにしてあげたい。でも今日は、おれにも全然余裕が無かった。にーちゃんのナカはすごく気持ち良くて、すぐにも出ちゃいそうだ。  でもそれじゃおいてけぼりのにーちゃんがかわいそうだ。だからにーちゃんの前も触ってあげながら、腰を動かすと、にーちゃんは首を振って、おれの背中に爪を立てる。気持ち良いみたいだ。中もきゅんきゅん締め付けて来るから、ますますおれも余裕が無くなる。  一緒にイこ? って耳元で囁いてあげながら、一層腰を激しく揺さぶると、にーちゃんは何度も首を振って、それから、「ア、ァッ」ってはっきり喘ぎ声を洩らした。それがあんまり可愛くて、思わず「好きだよ、リク」って名前を呼んで見たら、にーちゃんはそのまま、何も言わないまま、ビクビク震えながら出した。そのせいでナカの締め付けもキツクなって、おれもたまらず出してしまった。  頭が真っ白になって、呼吸もおろそかになって。しばらくして、深く息を吐きながら、にーちゃんからおれのを引き抜いて、隣に転がる。にーちゃんは抜く時にまた声を出したけど、そのまま荒い呼吸を繰り返して、一緒に転がっていた。  にーちゃん、って抱き締めてみると、のろのろと抱き返してくれる。にーちゃん好き、って言ってみると、僕も、と小さく返ってくる。たまらなく幸せな時間だった。こんな日が来るなんて思わなかったけど、すごく満ち足りていて、たまんなくなってにーちゃんをずっと抱き締めていた。  

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