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第2話

◆◆◆ 「おはようございます。昨日はどうもです」 会社の入口で本郷に会い頭を下げる司。 「傷大丈夫?ちょっと色変わってるけど」 「治っている証拠でしょ?色変わるの」 「そうだね、でも、折角の色男が台無しだね」 本郷はさらりとそう言って先に中へ入った。 「司、どーしたその顔」 部署に入ると目ざとく社員達が話しかけてくる。 「これ?知らない女に殴られた」 「はあ?どうせお前がちょっかい出して殴られたんだろ?」 「司くん、チャラ男だからなあ」 それぞれ勝手な思い込みで話し出すが司は言い訳しない。した所で信じて貰えないからだ。 「どうして現場を見てもいないのに司が悪いことになっているんだ?殴った女に罪はないのか?暴力だろ?」 先にデスクにいた本郷が司の代わりに反論した。 まさか本郷から反論されると思っていなかったので一瞬シーンとなるが先に司を悪いと決めつけた男性社員が引っ込みつかないのか「でも、女の子が殴るってことは相当な事をしないと殴られません?」と言ってきた。 周りはやめろ!!と口パクしている。 「ほう……女の子なら殴ってもいいって事か?それが男なら通報されて終わりだけど司は通報しなかった。ただ、ホテルに無理矢理連れ込まれそうになったのを拒んだだけなのだがね、男は拒否する権利ないのか?それとも据え膳食わぬは男の恥とでもいいたいのかな?」 本郷の低い声が響く。 社員はえーと、どうしよう?と焦っている。 「部長もういいっすよ!俺の見た目チャラいからそんな風にしか取られないだけだし、俺はもう慣れました」 司は本郷と社員の間に入りなんとか収まった。 「司、営業いくぞ!」 本郷は司の腕を引っ張り連れ出した。 ◆◆◆ 営業先で「ありがとうございます部長」と司は笑顔で言う。 「あー、もうちょっとあの場にいたらグーパンしてたからだ、お前もちゃんと否定しろー」 「いいんです、部長が庇ってくれたから」 ニコニコ笑う司。 「お前って損するタイプな」 本郷はそう言って司の頭をクシャと撫でた。 やがて相手がきて本郷も司も名刺を出して交換する。 相手が「失礼ですが本郷さんの下の名前何とお読みになるので?」と質問をする。 「スイウです。綺麗な名前ですよね、青葉に降り注ぐ恵の雨の事です」 答えたのは司。 「ほう、素敵な名前ですね」 相手は笑顔で名前を褒めた。 ◆◆◆ 営業が終わり外へ出ると雨が降っていた。天気予報では晴れだったのに。 梅雨の時期は折りたたみ傘が必需品だなと思う。 相手先の方がビニール傘を貸してくれたが1本だけ。それでも助かるので有難く借りた。 「おっさんと相合い傘は嫌かも知れないけど」 本郷は笑いながら言う。 「部長はオッサンじゃないでしょ?」 「それはありがとう」 そんな会話をしながら歩くが雨脚が酷くなってきた。 道路が次第に川みたいになり始め「こりゃ避難するべきだな。ここからマンションが近いから行こう」と司を誘う。 マンションに着くと靴の中が既に水が入って濡れていて、本郷が先に部屋にあがった。 その時に本郷の右側が酷く濡れている事に気付いた。 自分はスラックスの下の部分と靴と靴下しか濡れていない。本郷の右側だけ濡れているのは司が左側にいたからだ。 濡れないように傘を司の方へ向けてくれていた。傘を持つ時に本郷の方が背が高いから持つよって言ったのはそういう事だったのかと思う。

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