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2話
◆◆◆
本郷は確かに連れて行ってやると言った。なので、司はその3日後飛行機の中に居た。
福岡から1時間10分のフライト。
2人横並びで席に座る。司が窓側。
「あの、部長……これって仕事ですか?」
奄美に行くと聞いたのはほんの2日前。いきなり司のスマホに本郷から着信があり「2日後俺と出張だ」と言われたのだ。
「そう、だから経費で落ちる」
「うちの会社って奄美にもありますっけ?」
それは司の素朴な疑問。取引先や子会社、姉妹社はほぼ、本土ばかりだからだ。
「取引先の会社があるよ」
「えっ?そうなんですか……知らなくてすみません」
司は深々と頭を下げた。
その姿に本郷は少し驚いて、そして笑いそうになる。
この司という青年は見た目が派手だ。派手というのは美形という取り方もある。いや、美形なのだが。
彼はクォーターなので色素が薄い。色白で髪の色が栗色で目の色が鳶色で綺麗だ。彼に良く合っている。
「ああ、下見てごらん喜界島 が見える」
本郷に言われ司は窓の外を見る。
窓の外には綿あめみたいな真っ白な雲と綺麗な青色の空と海、一瞬どちらが空か分からなくなる程に同化していて頭が一瞬こんがらがる。その空と海を区切るように島が現れた。
「わあ!部長!雲が綿あめみたいですよ!海、海が青いです!」
外を見ながら子供みたいにはしゃぐ司を見て本郷は微笑ましくて和んでしまう。
「あの島が喜界島ですか?へえ、すごいなあ」
子供みたいにはしゃいでいた次は感心したように目をキラキラさせている。
見ていて飽きない。
そして、その後直ぐに司の大きな目が更に大きくなって外に釘付けになる。
「すごい……」
彼の目はまるで宝石か何か綺麗なモノを見るように真剣に感動したように窓に張り付くように見て、息を飲んでいる。
奄美大島の空港に着く手前、目の前に広がるエメラルドグリーンと珊瑚礁。写真や映像でしか見た事がない風景が飛行機の小さな窓いっぱいに広がるのだ。
手が自然とスマホを握り、無言で動画を撮る。
飛行機は地上に近付き、やがて着陸した。
◆◆◆
空港に着くとキャリーを持ち、司は本郷の後を着いて行く。
本郷は慣れたように先に歩き、外へ出ると誰かに手を振った。
日に焼けた長身の男性がこちらへ手を振っていて、本郷の知り合いかな?と司は後ろから男性を見る。
「悪いな迎えに来て貰って」
「いいよ、車も使うだろ?」
「レンタカー借りようと思ってたけど、経費で落ちると思うから」
「貸すよ、この車は使わないし」
「そっか、ありがとう」
本郷は青年に礼を言うと後ろで黙って会話を聞いている司に「司、これ、うちの長男」とさらりと紹介した。
「えっ?ちょ、長男?えっ?部長のお兄さん?」
司は突然の紹介にかなり驚いたようで声も大きくなり、目もクリクリさせて紹介された長男を見た。
「君が司くん?なんか、目が大きいね」
ニコリと司に微笑む彼は少し本郷に似ている。彼も長身で日に焼けて健康的だ。そして、彼もイケメンだった。
何?兄弟揃ってイケメンってずるい……司は心の中で思ったがもちろん口にはしない。
「春霖 って言うんだよろしくね」
握手の為に手を出されて司は慌てて手を出して握手を交わす。
「よ、よろしくお願いします」
握手したまま、深々と頭を下げた。
「暑いから乗って」
握手が終わった後に春霖に促され車へ。
荷物をクランクへ入れると本郷と2人後部座席に乗り込む。
「司くんは奄美初めてなんだって?」
「は、はい!テレビでは見てましたよ」
運転しながら話しかけてくる春霖に元気に答える。
「ああ、西郷どんか」
「はい!」
「じゃあ、後で西郷さんが住んでた家に連れて行ってあげようか?」
「えーー!!本当ですか?いいんですか?嬉しいです!俺、ドラマ見てて海綺麗だなって思ってて、風景も凄く素敵じゃないですか!あ、空から珊瑚礁見ました!凄く綺麗で言葉出なかったです」
司は興奮して一気に喋り、そして、ふと冷静になったのか本郷の方を見て「す、すみません部長……俺、興奮してうるさいですね」とはしゃぐ子供から急に真面目な大人に戻り謝罪するので本郷は笑いだした。
「いや、いいよ、飛行機でも興奮してたしな、良かったなエメラルドグリーン見れて」
慰めるように言うと「ほら、また海見えるぞ」と司側の窓を指さす。
窓に顔を向けると飛行機から見えたエメラルドグリーンの海が広がり、司は思わず窓を開けて顔を少し出すと直ぐにまた飛行機で見せたキラキラな瞳で海を見る。
「すごーい!凄いです部長!俺、あんなに綺麗な青色、バスクリーンでしか見た事ないですよ、本当に海って青色なんですね」
本当に無邪気な顔で本郷へ顔を向けて可愛い事を言う。
「後で海岸連れていってやるから」
「えっ!!いいんですか!」
司は素直に嬉しそうな顔をしてまた海に夢中になる。
写真を何枚も撮り楽しそうだ。
本郷はそんな司を見るのが楽しくて仕方なかった。
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