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4話

◆◆◆ 「あれー、スイと春ちゃん久しぶり」 鶏飯の店に入るや否や親しそうに男性が声を本郷達に声を掛けてきた。 「ここ、同級生がやってる店なんだ」 本郷に言われて司は慌てて「こんにちは」と深々と頭を下げる。 「本当、真面目なんだね司くん」 春霖が誰に会っても丁寧に挨拶をする司を見て感心しつつ和んでいる。 「そうですか?普通だと思いますよ?」 司はそう言って微笑む。 席に案内されて司が奥へ座らされ、その横に本郷が座り、本郷と春霖が向かい合って座った。 何気に自分の隣に座る本郷に司は気付いていない。 水やおしぼりをさり気なく司へと渡したり、注文を代わりに行ったりされて、その度に司は「すみません、ありがとうございます」と笑顔で答えていた。 やがて鶏飯が運ばれてきて、食べ方も本郷が教えてくれた。 丼に入った白飯に蒸した鶏肉やパパイヤの漬物、キノコと野菜の佃煮等の具材を乗せて汁をかけて食べる。 「美味しいです」 初めて食べた司は本当に美味しそうな顔で食べている。 「おかわりできるぞ?」 本郷に言われて「はい!」とおかわりも素直に頼み、食べ終わったら「ご馳走様でした」と言い。本郷の同級生の店長にも「凄く美味しかったです」と笑顔で言う。 本郷にはその全てがどストライクだったのだが顔に出さないようにしていた。 春霖が小声で「司くんって素直な子だね、見た目派手だからさ、なんか、損している感じもするけど、そういうの見せないというか、いい子だね」と本郷に言う。 「いい子だよ」 本郷は当たり前だろ?みたいな顔で返す。 春霖にも気に入られたようで凄い子だなと改めて思う。 会計をすると司が財布を出して本郷に渡そうとするが「経費で落ちるからいい」と断られた。 「でも、」 申し訳ないという顔で本郷を見つめる司。 「ご馳走様でいいと思うよ?」 春霖に言われて司は「部長、ご馳走様でした」と素直にお礼を言って頭を下げた。 「じゃあ、次は司くんが行きたい西郷さんの家に行こうか?」 春霖はポケットから車の鍵を出す。 「えっ?仕事……」 司は本郷をチラリと見る。 「司、行くぞ」 本郷は司の頭を軽く撫でると車へと乗り込む。 「はい」 司も笑顔になって車に乗り込んだ。 ◆◆◆ 車が走り出し、小さな道へと入っていく。 「帰りに畑に寄っていいか?」 春霖の畑という言葉に反応したのは司。 「サトウキビ畑ですか?見たいです」 キラキラした瞳で運転席の春霖を見る。 「なんか食いつき凄いね」 「この前、部長に黒糖食べさせて貰ったんですよ、凄く美味しくて」 司が言った食べさせて貰ったという言い回しに、ん?と疑問になり、バックミラーで自分の弟を見る。 視線に気付きニヤリと口元だけで笑う。 その微笑みでなんとなく察しがついた春霖。 「ありがとう、じゃあ、後で寄らせて貰うね」 春霖はこれ以上突っ込むまいと思った。 ◆◆◆ 目的地に着いた司のはしゃぎぶりは見ていて微笑ましたかった。 写真を何枚も撮って子供みたいにワクワクした顔。 「司、風景ばかり撮っているけど、自分はいいのか?撮ってやるからスマホを貸してごらん」 本郷は楽しそうに写真を撮る司に声をかける。 「えっ?いいんですか?」 嬉しそうにスマホを渡すと家の前に立つ。 画面から通しても司は可愛い。そして、陽射しのせいか髪の色が金色に見えて綺麗だ。 何枚か撮って司にスマホを渡そうと近付き、さり気なく彼の横に立つと顔を近付けて「司、笑って」と2人で自撮り。 その後司にスマホを渡した。 「後でその写真送って」 ポンと肩を叩くと何やら顔を赤くした司が「はい」と答えた。 「ほら、海も見えるぞ」 照れた司に声をかける。 家と家の間の細い道から青い海が見えた。 途端に司は照れた顔からまた子供みたいなキラキラした顔になった。 本当に見ていて飽きないなと本郷は思う。

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