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5話

道路を挟んで向こう側にある海を見て司は沢山写真を撮っている。 残念ながら防波堤と船着場なので砂浜に行くという事は出来ない。それでも司は海を見てキラキラした笑顔で「凄いですね、これ、西郷さんも見た海ですよね」と楽しそうだ。 「明日はちゃんと泳げるとこに連れて行ってあげるよ」 本郷は思わず言葉にしてしまうくらいのはしゃぎぶりだった。 その後はまた車に乗り、山側へと移動して行く。 そして、一面のサトウキビ畑にと着く。 風に揺れて葉と葉が擦りあってザワザワと音が聞こえる。 「凄い……」 司はその光景を見てその一言を放ったまま黙り込む。 「どうした?」 本郷が近くに行くと「なんか、言葉が見つからないというか語彙力ないから上手く言えなくて、ただ、本当に凄いです」 司の瞳はザワつくサトウキビ畑を真っ直ぐに見ていて圧倒されているようだ。 「こういう風景って初めて見るから」 「司はそうだな、俺達は見慣れているけど」 本郷は司の頭をポンと軽く撫でる。 「俺らのおやつってサトウキビだったし、サトウキビかじりながら海に行ってたよ」 春霖はそう言いながら車のトランクを開けるとサトウキビ専用の鎌を取り出す。 「えっ?それ何ですか?」 春霖が手にする鎌は見た事もない形をしていて鎌となる部分の先にU字型の刃物がついている。 「専用の鎌だよ」 春霖は畑に入るとサトウキビを掴むと鎌の刃の部分で狩り、司の前に出す。 「わあ、やっぱり太くて大きい」 サトウキビを見て目を輝かせる彼の前で春霖はU字型部分の刃でサトウキビの葉を切り落とす。 「あー!そのU字型って葉を落とすためなんですか!!」 「そうだよ。この方が葉を落としやすいし」 その後春霖はまた鎌の刃の部分でサトウキビの茎の皮を剥く。 「このまま食べてごらん?甘いから」 中から少し緑色が入った黄色い中身を差し出された。恐る恐る噛んでみると甘い。 「あ!凄い!甘いです」 「だろ?」 司は余程気に入ったのかその後もかじっている。 「なんかリスみたいで可愛いぞ?」 本郷はその姿を見て少し笑う。 「だって、美味しいですもん……これが黒糖になるんですか?」 「うん、そうだよ、刈った後に機械で絞って煮るんだ、6時間くらいかな?」 「そんなに?」 「でも、黒糖になるのはほんの少しだよ、300キロ絞っても30キロにしかならない」 「えっ?そうなんですか!」 「あとウチはこだわりあるから機械で刈り入れしないし、除草剤も使わないから雑草多いだろ?雑草ない方が早く育つんだけど、それじゃあ美味しいのは出来ないし、虫が死ぬって事はそれくらい強い薬っていうのも嫌だし、だからウチは何時までたっても貧乏なままだよ」 春霖はふふっと笑う。 「あの、俺、上手く言えないですけど、春霖さんの黒糖凄く美味しかったのはそうやって手間暇かけてこだわるからですよね?それが味に出てるって思います。本当に美味しかったですもん!あんなに美味しいの初めて食べたって感動しました」 司は興奮しながら一気に話す。 興奮気味な司を見て春霖は「君は凄くいい子だね、スイが連れてきたのわかるよ」と言った。

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