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「まー、こんなイケメン二人を前にしたらそうなっちゃうのもわかるぜ、じゃあライン交換しちゃう? あ、こいつは今時ラインやってねえ珍しいやつだから諦めとけ」  えっ。思わず声がでそうになった。俺がラインをやっていることは、上野四信だって知っている。「ライン交換しようぜ!」「それはちょっと」「もしかして……ラインしてねえの?」「してますけど」「じゃあ交換しようぜ!」「それはちょっと」「なにこれループ?」バカみたいに上野四信としたやりとりなのに。  ニカッと上野四信は歯を見せて笑い、俺の肩に腕を回しながらブレザーの内ポケットからスマホを取りだす。JKは「ラインやってないとかちょう硬派!」と笑いながら、上野四信と一緒になってスマホを振る。「じゃああとでラインするねー」JKは楽しそうに上野四信に手を振り、俺には小さくお辞儀をして、去っていった。  なんで、うそついたんですか。俺がラインやってるって知ってるくせに。俺のこと、気づかってくれたんですか。いつも俺に塩対応されているのに、その俺にどうして神対応できるんですか。あんた、バカなんですか。バカでしょ。  聞きたいことがやまほどあるのに、上野四信があまりにもいつもどおりだから、なんにも聞けない。聞いたとしても、きっとニカッと歯を見せて笑うだけ。上野四信はそういう男だ。 「お前、シャツにグロスついてんじゃねーか! あの子につけられたのか、ヒューッ」 「……つけられたっていうか、前方不注意でぶつかって、クリーニング代弁償するとか、カラオケ代奢るとか、いろいろ言われて」 「お前優しーからなー、ぐいぐい来られると弱いもんなー、とりあえず脱げ」  いきなりなにを言っているんだあんた。  思わず自分の体を抱きしめると上野四信は「襲わねーっての!」とゲラゲラ笑い、俺の腕に肩を回したままトイレの扉を開け、真っ先に向かったのは手洗い場。スラックスから青いハンカチを取り出すと、水で濡らしていく。  もしかして、シャツについたグロスをとろうとしてくれているのか。上野四信が。大雑把で、豪快で、存在がうるさい上野四信が。 「はーい、旺二郎くんバンザイしましょうねー」  まるで赤ちゃんに言うような口調。思わず笑いそうになったけど、上野四信に心を許したわけではない。口元をひきしめシャツを脱ぐと、上野四信は「上手にバンザイできたねーえらいぞー」なんて言うからますます笑わせにかかっている気がした。笑ってやらないけど。

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