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「おうちゃん、いっくん、遅い! 写真撮ろー」  赤組の席に戻ると、なっちゃんだけじゃなくて、みっちーまでもハチマキを猫耳で決めていた。  みっちーの猫耳とか誰も勝てないからやめてあげて。周りの女子がかわいそうだよ。みんな無言で猫耳ハチマキやめていってるよ。 「三千留の猫耳決まりすぎでしょ笑える」 「五喜なぜ笑う俺様を称えろ」 「キャー三千留様ステキー猫界のリバーフェニックス」 「そういう五喜は猫界のアランドロンにしてやろうか」 「蝋人形にしてやろうかみたいなテンションやめて」  いっちゃんは高校一年生に思えないほど大人だけど、みっちーといるときだけ少年に戻る。「三千留の前だとつい馬鹿になっちゃうんだよね」と笑ういっちゃんが、俺は大好きだ。たぶん、なっちゃんも。いまも二人のじゃれ合いをなっちゃんはにっこにこ目を細めて動画におさめている。 「写真撮ろーと思ったのにいっくんとちるちるが仲良しすぎて動画にしちゃったじゃーん、今度こそみんなで写真ね! おうちゃんも猫耳にしようねー」  俺の猫耳はキツイ。やめよう。やめて。なっちゃんほんとにやめてくださいと言ったのに、ネクタイ結びをするりとほどかれ、あれよあれよと猫耳が完成したしてしまった。百八十超えの男が猫耳はキツイってほんと。  なっちゃん、みっちー、いっちゃんは猫耳でも最高の決め顔。うん、笑える。固まっていた頬も自然とゆるんで、三人にはものすごく劣るけど、俺にしてはマシな表情をして映っていた。なっちゃんの腕前がいいっていうのも一理ある。 「おうちゃんもいい顔してる! インスタあげていい?」 「いやだ。俺だけ切り取ったらいいよ」 「三人をインスタに載せるといいねが止まらなくてやばいから載せまーす」 「俺よりいいねを大事にするの」 「俺の友だちを世界中に自慢したいんだよねー、かっこよくて、かわいくて、俺の友だちマジサイコーでしょって」  ずるい。なっちゃん、それはずるい。友だちという単語だされると、まぁ、いいかって気になる。さっき撮った写真を見ながら「ちるちるマジ決まりすぎー、いっくんもノリノリだし、おうちゃん顔が良すぎるでしょー、マジ顔面偏差値限界突破してるわー」なんて楽しそうに笑っているなっちゃんを見ると、ますます、どうにでもしてくれっていい意味でお手上げ状態。 「やばい秒でいいねされまくってる。おうちゃん見てみて、おうちゃん宛てのコメントもいっぱい」  さっき投稿したばかりなのに、なっちゃんが載せた写真は千いいねを超えていた。ずらりと並ぶコメントはどれもこれも俺たちを褒めちぎっている。「なっちゃんほんとかわいいイツメン最高」「ちるちるマジ猫界のリバフェ」「いっくん眼鏡と猫耳最高かよ」「おうちゃんかっこよすぎて語彙力なくなる」毎朝自分の顔を見て、さえない顔だとげんなりするのに。猫耳つけてますます痛いのに。かっこよすぎる、なんてうそだとしても、ありがたさで胸がしみる。もしかして「かっこよすぎる」ってコメントすると誰かからお金がもらえるシステム?  

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