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「言っておくけど「かっこすぎる」ってコメントしてもこの子たちにはお金入らないからね! リアルガチでかっちゃんカッコイイーって思ってくれてるんだからね」
なっちゃんに心を読まれている。いっくんも、なっちゃんも、すぐに俺の心を読んでくるのやめて。
「だって、俺、さえない顔だし」
「もーおうちゃんのバカ! いくじなし! おうちゃんの顔は国宝級だよマジ顔面偏差値。世界で戦えるよ」
「世界とか無理、絶対に負ける戦いだよ」
「毎朝鏡を見てるのか疑いたくなるわー」
「さっきもトイレで見たけどさえない顔が映ってたよ」
「なにがおうちゃんをそうさせたんだろう」
よしよし、おうちゃんはイケメンだよ。俺は知ってるからね。
子どもをあやすように俺の肩に腕を回すなっちゃんがおかしくて「ありがとう」と言っておいた。
「あ、ちゃんしーパイセンとあゆさんだ! あの二人が赤とか勝ち確だよねー」
アリーナに次の競技である徒競走に出場する生徒がぞろぞろ集まっている。黒髪がたくさんいるのに、なっちゃんが上野四信をそっこーで見つけられたのは渋谷歩六 がとなりにいたからだろう。バスケ部エースでオラオラ系イケメン。週一で彼女が変わると噂されるほどの女好き。泣かした女は数知れず。この時点で俺は願い下げなんだけど、それにくわえて銀髪なのだ。ほんと無理。イケメンの銀髪とか怖すぎる。どう生きていたら銀髪に染めようと思うのだろう。俺はきっと一生染めない。こげ茶のままがいい。
「上野四信と渋谷歩六、単体でもまぶしいのに二人揃うとやばい。暴力だ」
「それ、おうちゃんが言っちゃうかー無自覚イケメンこわーい。おうちゃんこそ美の暴力だよ」
美の暴力っていうのは、みっちーでしょ。
チラリとみっちーのほうに視線をやると、たった一人だけを美しい青い瞳に閉じ込めていた。絵になるなぁ。だけど、みっちーの美しさは俺には表現できない。恋するみっちーはまさしく美の暴力だ。
みっちーの青い瞳に映したたった一人の男が、渋谷歩六だということだけは、ものすごく納得がいかない。なにがいいのって聞けば「渋谷の良さがわからぬのか。旺二郎もまだまだだな」と鼻で笑われた。わからないから聞いてるのに教えてくれないとかひどい。渋谷歩六を好きになるくらいだったら、上野四信のほうがずっといい。二択なら上野四信を選ぶ。そう思いながら、ぼうっと見つめていると、渋谷歩六となにやら楽しげに話していた上野四信が視線を観客席のほうへ上げた。
あ、目が合った。二秒でわかった。だって、上野四信の口が「おうじろう」と動いたから。ニカッと歯を見せて俺の名前をわざわざ呼んでいた。なんで、俺なんかを構うんだろう。変な人だ。だけど、カラオケの一件からどうにも憎めない。その前までは目を合わせたくない人No.1だったのに。
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