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 雨の降る日が続くと気持ちがブルーになる。だから六月はあまり好きじゃない。どしゃぶりの日なんかはなにもしたくない。早く帰ってばあちゃんのお味噌汁をすすりたいのに、どうして俺はいまカラオケに来てるんだっけ――ああ、そうだ、約束しちゃったからだ。渋谷歩六に合コンへ行くと。なっちゃんがいいなら行くと言ったら、渋谷歩六はそっこーでなっちゃんに許可をとり、そっこーで合コンをセッティングした。さすがバスケ部エース、行動力がすごい。  まだ相手の女子は来ていない。渋谷歩六はレベル高い女子大生を集めたと言ったけれど、しんそこどうでもいい。レベルが高かろうと、低かろうと、俺には関係がない。合コンから真実の愛は生まれないから。  渋谷歩六となっちゃんが『純恋歌』を歌ったり、ラップバトル始めたり、カラオケを楽しんでいる中、ブルーな気分でいるのは俺だけだろう。はぁとため息をひとつもらした。 「旺二郎はなんか歌わねえの?」  コーラを持ち俺のとなりに腰を下ろした上野四信をじっと見つめ、ゆるく首を横に振る。こんな気分で歌える曲があるとしたら、バクナンぐらいだ。気分が暗くなくてもいつもバクナンを歌っているけど。 「お前がこういうこと好きじゃねえってのはなんとなーくわかる。俺も実は合コン苦手だしよ」 「それはうそでしょう」  あんたは場を盛り上げるのがうまいし、合コンだって得意に決まっている。なっちゃんだって女性相手がうまいし、この場で心から楽しめていないのは俺だけ。そう思いながらメロンソーダを飲むと、上野四信が拗ねたように唇を尖らせる。あんた、そういう顔もできるのか。いつもザ年上な顔ばかり見せるくせに。 「嘘じゃねえっての、こういう場所で出会ってその場だけ盛り上がっても、どうもしっくりこねえ。勢いじゃなくて、ゆっくりわかりあいてえんだよな。ガッ! じゃなくてじわじわがいいんだよ、わかる? いや、わかんねえよな、よく引かれるし。歩六には今時小学生だってもっと進んでるとか言われたわ」  自分の恋愛観を熱く語ってしまったことがはずかしいのか、上野四信の頬が赤い。コーラをがぶ飲みして「あー、おかわりもらってくるわ! 旺二郎もいる?」勢いよくソファーから腰を上げる姿は、どこからどう見ても照れくさいのをごまかしています感。  なにこのひと。この間からなんなんだ。かわいいんですけど。しかもめっちゃわかるし。俺もじわじわがいい派だし。 「わかります。ものすごく。俺もじわじわ派」  ドリンクバーは俺も一緒に行きます。そう言って、ソファーから立ち上がる。上野四信はいっしゅん目をまんまるくしたけれど、すぐに嬉しそうにはにかむ。「マジか、旺二郎もじわじわ派かよ。じわじわ派同士仲良くしようぜ」いつものように肩に回された腕。もうとっくにいやじゃなかった。

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