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「……なんですか」 「旺二郎が楽しそうだなって思って」 「さっきも言いましたけど、毎日楽しいです」 「さっきよりもっと楽しそうだからよ」 「どんなふうに四信先輩を描こうか、どんなふうに色をつけたら四信先輩がより輝くか、俺が四信先輩を見てまぶしいって思うように俺の絵を見てみんなにもまぶしいって思ってもらうためにはどうすればいいか、いろいろ考えたらワクワクして、楽しくてしょうがないんです……いけませんか」  早口でまくし立て、じっと四信先輩を見る。四信先輩はしばらく固まると、俺からわずかに視線をそらした。かすかに頬が赤いのは気のせいだろうか。  なんで目をそらすんだ。俺、変なこと言ったっけ。必死になって顔を覗き込もうとすると、四信先輩は困ったように眉尻を下げる。  あ、その顔、かわいい。すんなりその四文字がでるようになるほどに、俺は四信先輩のことをかわいい人だと思ってしまっている。 「なんで目そらすんですか」 「だって」 「だってじゃないです」  だだっこみたいに四信先輩は「だってよ」とくりかえす。なんなんだかわいいな。 「え、今俺口説かれた? って気分になっちまったんだよ、ビビったわ! 俺が眩しいとかなんだそれ、旺二郎のが眩しいからな! あー、もー、休憩終わり、練習あるのみだわ!」  つまり、俺が、四信先輩を、口説いたってこと?  それ以上四信先輩はなにも言わず、ただひたすらむずかしそうなドリブルをなんてことのないようにこなした。俺はというとスケッチしようと思ったのに、無意識に四信先輩を口説いてしまったかもしれない事実を受け止めきれず、筆が止まった。穴があったら入りたい。 「……あの、四信先輩、明日も来ていいですか」  明日っていうか、毎日かもだけど、とりあえず明日って言っておこう。明日が許されたら、きっとあさっても、しあさっても許される。  頭の中で謎理論を展開して、四信先輩の背中を見つめる。きれいな背中だ。Tシャツの上からでもわかるから脱いだらもっとすごいだろうな、いや、脱がれたら困るけど、同性なら困らないか、でも、ううん、四信先輩に脱がれたら困る、どうしてだかわからないけど。ほかの誰かだったらまったく気にならないのに。  バカみたいなことを考えているときに四信先輩がくるりと振り返る。俺のよこしまな妄想なんて、知らない四信先輩はいつもみたいにニカッと歯を見せて笑った。「大歓迎! 明日なんて言わねえで毎日来いよ」ああ、俺は四信先輩にそう言ってもらいたくて、明日って言ったのかもしれない。思わず目を細めて小さく頷いた。

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