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 夕飯を食べ終え、ようやく現実と向き合う決心がついた。カバンの中からスマホを取りだすと、いっちゃんが見守る中で、電源をいれる。まっさきに視界に飛び込むのは陶芸しているばあちゃんの写真。ほっと安心するいい待ち受けだ。 「待ち受けがおばあさんって男子高校生としてどうかと思うよ。逆にありなのかな」 「じゃあいっちゃんの待ち受けはなんなの」 「自分で点てたお茶」 「渋すぎる」  茶道の家元の息子らしさを狙ったザいっちゃんな待ち受けだと笑いながら、ラインのアイコンを見つめる――通知件数が十二件。まさかの二桁超え。  俺のラインを知っている人は少ない。ばあちゃん、兄貴、姉貴。なっちゃん、みっちー、いっちゃん、そして四信先輩。元カノは別れてからすぐブロックしたから、数えるていどしかいない。だから、ラインのアイコンに表示される通知件数はいつだって少ない。活発に動いているのはなっちゃんたちのグループ、四信先輩とのトーク。この十二件は誰の発言なのだろうとおそるおそるラインのアイコンを押した。  あ、やばい。涙腺がバカになってる。だって、四信先輩の名前がトークリストの一番上に来ているだけで泣きそうだ。嬉しいのか、怖いのか、自分でもよくわかんないけど、とにかく目頭が熱くてたまらない。 「旺二郎泣きそうなら僕が見てあげようか」 「やだ、俺が見る」  はっきりと言いきると、いっちゃんはどこか楽しげに「そっか。泣きそうになったら言ってよね、慰めてあげる」と笑った。  ふるえる指先で四信先輩のトークに触れる。「旺二郎、さっきはごめん」「俺が変なこと言ったからお前まで戸惑っちまったよな」「マジごめん」「ちゃんとまたお前と話したい」「これっきりで終わりとか無理だから」「なにがあってもお前との縁切るつもりねえからな」「俺のことなめんなよ」「俺すっげーしつこいやつだからな」「お前なら知ってるだろうけど」  知ってるよ、すごく知ってる、四信先輩がしつこい人だってこと。知りすぎている。  ぽたぽたとスマホの液晶に涙があたる。それでも構わずにトーク画面をスクロールした。「明日も待ってる」「ぜってえ来いよ」ほんと、ずるい。こんなこと言われたら行くに決まってるじゃんか。読む前よりももっとふるえる指先で「いきます」と打った。変換すらできない指先に笑うと、あっという間に既読がつく。  もしかして、ずっと俺のトーク画面にいた? 俺からの返事を待ってくれていた? なんだよそれ、かわいすぎないか。かわいいが暴走しそうになりながらも、じわじわ申し訳ない気持ちがつのる。どんな気持ちで待たせてしまったのだろうか。四信先輩ごめんなさい、俺のことを待っていてくれて、ありがとう。  画面を眺めること数分、「おう」「待ってるから!」四信先輩らしい返事に自然と笑っていた。

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