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「あれお前本郷のダチじゃね?」  さいあくだ。酔っ払いの客に絡まれるより先に受付の月島音八に絡まれた。あいかわらず覇気のない目をしている。客商売とは思えない態度だ。  受付の人になっちゃんに会いたいと頼もうと思っていたけど、早々に作戦失敗な予感。 「……どうも」 「やっぱりそうだよな。お前みてぇなイケメン滅多にいねぇもん。まぁ本郷のダチはみんな顔面偏差値高いけどな。白金の坊ちゃんとか、黒髪眼鏡御曹司とかよ」  黒髪眼鏡御曹司はいっちゃんのことだろう。白金の坊ちゃん、どう考えてもみっちーだ。でも、なんでみっちーの名字知っているんだろう。なっちゃんが話した? だとしても、なっちゃんなら名字じゃなくてちるちるってあだ名で話しそうなものだけど。  いまはそんなこと気にしている場合じゃなかった。なっちゃんに会わないとここに来た意味がない。勇気をふりしぼれ、神谷旺二郎。俺はできる。大丈夫。 「あの、なっちゃん……じゃなくて、本郷くんに会いたいんですけど」 「本郷に? 明日学校で会えばよくね?」  月島音八はなめるように俺を見つめてくる。まるで、蛇の舌が身体中を這うような視線。  こわい。ちょうこわい。だけど、ここで怯んだらぜったいにだめだ。なっちゃんは明日も学校に来ないかもしれない。だから、今日会って話したい。 「どうしても、いま会いたいんです。今日じゃなきゃだめなんです、今日なっちゃんと向き合いたい」  俺の気持ちとか、なっちゃんの気持ちとか、いろいろちゃんと話したい。今日じゃなきゃだめだ。だって、俺、明日四信先輩に告白するつもりだから。その前になっちゃんと向き合いたい。  月島音八と視線を合わせるのはしんそここわかった。だけど逃げるわけにはいかない。おそるおそる視線を月島音八に合わせると、やっぱり死んだ目をしている。なにを考えているのか、さっぱりわからない。底知れぬ闇を感じるのは、どうしてだろう。 「へぇ。お前、なかなかいいオトコじゃん。好きなオトコに振られたら俺が遊んでやってもいいぜ」  ぐっとネクタイを引っ張られたかと思ったら、月島音八の顔が視界いっぱいに広がる。鼻先がふれ、いまにもキスできそうな距離感。必死に顔をそらしたしゅんかん「音八パイセン、おうちゃんはピュアボーイなんだからからかうのやめてくれません?」部屋からでてきたなっちゃんが月島音八から引きはがしてくれた。 「ピュアだからこそ、からかいたくなるんだろ。綺麗なものは汚したくなるのはオトコの性だ。おい本郷、休憩行ってこい」 「俺まだ休憩の時間じゃないっすけどー」 「いいから行けよ、先輩命令だボケ。で、そいつと決着つけて来い」  なっちゃんは月島音八を見てから、俺を見る。すこし困ったように、だけど嬉しそうに笑い「ういーっす、休憩いってきまーす」と言って俺の腕を掴んだ。なっちゃんに引っ張られるままついていきながら、ちらりと月島音八を見るとウィンクを飛ばされる。思わず避けるように顔をそらすと月島音八は「サイコーかよ」と笑っていた。なにがサイコーだかさっぱりわからないけど、思ったより悪い人じゃないかもしれない。

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