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「……なっちゃんの本音、初めて聞いた気がして、嬉しくて、つい。ていうか、なっちゃんはかっこ悪くなんかないよ、俺はどうしたってなっちゃんみたいになれない。なっちゃんみたいに四信先輩と冗談いいあったりとかできないし。だから、絵を描こうって思った。四信先輩の絵を。それで四信先輩と関わっているうちに、俺、四信先輩のこと好きになった。すごい好きだよ、大好きなんだ、最初苦手でたまらなかったのに、目合っただけで無理だって思ったのに」  アンラッキーな一日から救ってくれた四信先輩。あの日からすべてが変わった。  四信先輩を知るたびに、近づくたびに、毎日が楽しくなった。ささいなことでワクワクして、四信先輩の一挙一動にドキドキした。  もっと知りたい。ぜんぶ知りたい。そう思って、四信先輩の孤独にすこしだけ触れたら、たまらなくなった。俺が四信先輩に救ってもらったように、四信先輩の孤独をとりのぞきたい。ほかの誰かにそのポジションを渡したくない、たとえなっちゃんであっても。  バカみたいに涙がこぼれる。悲しいからじゃない。さみしいからじゃない。なっちゃんと本音をぶつけあっている、それが嬉しくて、涙がとまらない。 「たとえなっちゃんでも、四信先輩のとなりは譲れないよ。もし俺が四信先輩に振られて、なっちゃんが四信先輩とつき合っても、なっちゃんなら安心して四信先輩を任せられるとか、俺はぜったい言えない、そんなことみじんも思ってないから。俺、嘘つけないから、思ってもいないことは言えない」  涙と鼻水まじりのかっこ悪い顔でなっちゃんを見つめる。なんだ、なっちゃんも、俺と同じくらいかっこ悪い顔してる。涙と鼻水まじりの顔。それなのに、不思議となっちゃんのことはかっこ悪いと思えなかった。 「だけど、なっちゃんと四信先輩がつき合っても、うらまないよ。ムカつくかもだけど、なっちゃんだし。俺、四信先輩のこと大好きだけど、なっちゃんのことも大好きだから。なにが言いたいのかよくわかんなくなったけど、俺の言葉、なっちゃんに、伝わってる?」 「うん、ちょう伝わってる、大丈夫。俺もさ、おうちゃんが大好き、だから、うらみっこなしね」  なっちゃんが俺のほうへ手を差しだしてくる。その手を握ろうとしたしゅんかん、なっちゃんに強く抱きしめられる。痛いよなっちゃん。心の中で笑いながら、抱きしめ返した。 「……おうちゃん、マジでありがと。俺に本音をぶつけてくれて。今のおうちゃんマジ眩しいよ、ちゃんしーパイセンに負けてない、むしろ勝ってる。だっておうちゃんはまだまだ眩しくなれるもん」 「じゃあ俺に四信先輩譲ってくれる?」 「それとこれは別の話だなー」 「なっちゃんのケチ」  二人で顔を見合わせて、思いきり噴きだして笑った。なっちゃんの心からの笑顔、久しぶりに見た気がして、また泣きそうになったのは秘密だ。

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