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二秒で閉める_05

「インハイ決勝での四信先輩を目に焼きつけて、コンクールにだすって決めたから赤点はだめだ。どうしようなっちゃん」 「そんなおうちゃんに朗報です。ここには学年一位二位の天才がいます! 不動の一位ちるちる、二位に執着いっくん!」  じゃーん! となっちゃんは効果音を口にし、みっちーといっちゃんの肩を叩く。学年一位と二位がこんなに身近にいると思わなかった。みっちーといっちゃんは学年どころか、全国模試一位二位も独占していそうだ。 「みっちー、いっちゃん、助けてください」  二人に向かって両手を合わせると、みっちーは「俺様に任せておけ」とあっさり了承してくれるけど、問題はいっちゃんだ。いっちゃんに頼みごとをするということは、いっちゃんに借りを作るということ。つまりは、いやな予感しかしない。 「旺二郎が僕のお願いを聞いてくれるなら助けてあげてもいいよ」 「お願いって兄貴関連でしょ」 「よくわかってるね、さすが旺二郎」  あの日からいっちゃんは兄貴への好意を隠そうとしなくなった。みっちーはぜったいに知っていると思っていたけど、なっちゃんの前でも隠さないってことは、なっちゃんもいっちゃんの思いを知っていたのだ。 「とりあえず聞くだけ聞くけど。変なことだったら無理」 「そう言われると変なこと言いたくなるなぁ。一志さんの高校時代の写真って家にある?」 「写真? アルバムとかならあるよ」 「それを見せてほしいな」 「それだけでいいの?」 「うん。それがいい」  いっちゃんにしては控えめというか、かわいらしいお願いだ。この間みたいに「一志さんを僕にください」なんて言われるかと思ったのに。  俺といっちゃんのやりとりに、みっちーとなっちゃんがにやにや笑っている。「カズちゃんを巡って静かに火花を散らしてるね」「青春だな」「青春だね」みっちーはすぐ青春と口にする。みっちーだって、青春をしているくせに! 「それでだ、勉強会は今日の放課後決行するとして、どこでする? いっくんの家?」 「僕の家狭いよ。三千留の家がいいんじゃない?」 「どうせなら上野も呼ぶか。そのほうが二人とも張り合いが出るだろう」  二人ともと言ったみっちーはあきらかに俺となっちゃんを青い瞳に映していた。四信先輩が来るのは嬉しい。嬉しいけど、なっちゃんと四信先輩と俺、三人でいるのは気まずい空気になりそうな気がする。四信先輩はなっちゃんの思いを知らないとしても。  ちらりとなっちゃんを見つめる。なっちゃんは困ったように眉尻を下げながらも、しっかり微笑んでいた。 「七緒は上野よりあいつを連れてきてほしいか」  みっちーはゆるく口角を上げ、なっちゃんだけを見る。さっきまでは微笑んでいたなっちゃんも、あからさまにため息を吐いた。  あいつって誰? と聞いていい雰囲気じゃない。四信先輩よりも、連れてきてほしい人って誰だ。

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