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二秒で閉める_08

「……みっちーと月島音八は、知り合いなの?」  もっとうまい聞き方があっただろうに、俺はどうしてこうもどストレートにしか聞けないのだろう。自分でもびっくりするくらい下手な言い回しにため息を吐きたくなるけど、みっちーがとびきり優しく笑いかけてくれたから、なんだっていいかと思えてくる。 「ああ、音八は俺の家族だ」  みっちーと月島音八が家族って、どういうこと。  そう思ったのは俺だけじゃなく、なっちゃんもだった。そんなこと聞いてない、なっちゃんの緑の瞳がそう物語っていた。 「音八パイセンがちるちるの家族ってなに、どういうこと、聞いてないんだけど」 「七緒が聞いてこないから特別言う必要はないと思った」 「えーー言うでしょそういうことは! バイト先紹介してくれたのもちるちるじゃん! その時言って! ていうか家族ってどういうことなの、名字違うし、顔だってちるちると音八パイセンぜんぜん似てないよ」  たしかに、みっちーと月島音八は名字が違う。顔だってぜんぜん似ていない。みっちーはハーフだけど、月島音八はハーフに見えない。赤い髪はいかにも染めているようであちこち傷んでいる。そもそも、月島音八からはセレブオーラをいっさい感じない。 「これ以上は俺様の口からは言わないぞ。男は秘密の一つや二つあったほうが色っぽいだろう」  みっちーは薄くて形のいい唇に人差し指を当てる。  なっちゃんは四信先輩が好きだということを隠していたし、いっちゃんだって兄貴への思いを俺に秘密にしていた。俺はなにか隠しごとしているだろうか。そういえば四信先輩への思いはみんなに言う前にバレていた気がする。俺には隠しごとは向いていないらしい。 「わかった、詳しいことは音八パイセンから聞きますーもー、ちるちるも音八パイセンも秘密主義すぎ! いっくんも知ってたわけ?」 「僕はあいにく音八さんに興味がないから知らなかったよ――それで、話がものすごく脱線したけど勉強会は三千留の家でいいんだよね」  とことん月島音八に興味がないのか、いっちゃんは強引に話をまとめにかかる。  まだみっちーと月島音八の関係性がよくわかってないと不満を言いたくなるけど、なっちゃんに任せよう。これは俺の問題じゃなくて、なっちゃんの問題だ。 「ああ、俺様は構わないぞ」 「じゃあ四信先輩にラインしてみる――みっちー、渋谷歩六はいいの?」  ラインを起動して四信先輩にメッセージを打ちながら何気なく聞いた。みっちーはゆるく首を振る。「あいつは戦力にならない」学力的な意味ですねわかります。深くみっちーの言葉に頷いて「今日みっちーの家で勉強会するんですけど四信先輩もどうですか」と送信すると、二秒で既読がついて「行く!」とメッセージが返ってきた。すぐ既読がつくのかわいいし、文字からも四信先輩の元気さが伝わってきて、顔が自然とにやける。 「ちゃんしーパイセンからの返答はおけまるってところかな」  なっちゃんは俺のスマホを覗き込んでいるわけじゃないのに、四信先輩の返答をばっちり当てる。もしかして、エスパーなっちゃん。 「なんで四信先輩が来るってわかったの」 「だって旺二郎の顔に書いてあるよ」 「だだ漏れだな」 「……俺も秘密主義になりたい」  顔を覆い隠してため息を吐く。「旺二郎が秘密主義とか無理でしょ」「おうちゃんはそのままでいて」「だだ漏れなのが旺二郎らしいぞ」エスパー三人衆は黙っててほしいと指の隙間から睨むと、三人は思いきり噴きだして笑った。幼なじみトリオこのやろう。

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