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二秒で決まる_03

「みっちーにラインします。どうせだから決勝だけじゃなくて、最初から見たいです」 「マジ? 旺二郎が見てくれたらいつも以上に頑張れそう。百花はシードだから初日は試合なくて、二日目からなんだよ。初日に来てくれたらその日の夕方、デートしてえけどどうですか!」  スラックスからスマホを取り出して、みっちーに連絡しようとしていたら四信先輩がずいっと俺の顔を覗き込んでくる。もしかして、俺がスマホに夢中なのがいやだったのかな、なんてポジティブ解釈をしてしまう。昔の俺だったらとんでもネガティブ思考だったはずなのに、四信先輩を好きになって、両思いになったおかげだろうか。結果、ちゅっと四信先輩にキスをしていた。 「……今なんでキスした?」 「さ、さみしいのかなって思って。俺がスマホに夢中になってたから。あ、初日の夕方、デートしたいです」  ちがったら恥ずかしすぎるからやたら早口でまくし立てると四信先輩は前髪をくしゃくしゃ掻き乱す。  あ、照れてる。かわいい。俺の四信先輩は世界で一番かわいい。 「おう、俺にも構ってほしいなーって思ってた」 「めっっちゃ構います、ちょう構います、むしろ俺のほうがいつだって四信先輩に構ってほしいですから――こうしたら、さみしくないですか」  四信先輩を後ろから抱きしめ、膝に乗せる。これならみっちーに連絡することができるし、四信先輩も堪能できる。堪能できすぎてバカみたいにドキドキしてきた。だけど、ドキドキしているのはきっと俺だけじゃない。四信先輩の耳が真っ赤になっているのがよく見える。 「旺二郎、マジでいきなりすぎる。宣言しろっての」 「抱っこしていいですか」  両腕を四信先輩のお腹に回す。練習着越しでもわかるほど、四信先輩のお腹にはしっかり筋肉がついている。かわいいのに、こういうところカッコいいんだよな。だけどかわいい。四信先輩ちょうすごい。 「もうしてるだろ! まっ、いいけどよ、ほら、三千留にラインしろって」  俺のほうに振り返った四信先輩はいつものように豪快に笑った。やっぱり四信先輩の笑顔は世界で一番かわいいと思いながら「はい」と頷いて、四信先輩の肩口に顎を乗せてみっちーへのメッセージを考える。 『みっちー助けて。四信先輩を応援しにインハイ行く予定だったんだけど、東京だと思い込んでて沖縄行きのチケットとかなんにもとってなかった。どうしよう』  ありのまますぎる文章を打って送信すると、四信先輩がゲラゲラと笑う。「すっげえノープラン感が旺二郎だよな」褒められていないはずなのに、四信先輩に言われると褒められた気分になるから不思議だ。

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