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二秒で決める_06

「自己紹介がまだだったな、俺は白金司(しろかねつかさ)だ、よろしくな」  まぶしい。キラキラというより、ギラギラだ。  白金家が所有しているプライベートジェットに乗せてもらうため、白金家へ訪問すると「俺様は用事があって一緒には行けないが、兄の司が一緒に行ってくれる。なにか困ったら頼れ」みっちーのとなりに黒髪オールバックの美形男性が立っていた。  そのまま司さんとリムジンに乗せられ、プライベートジェットを保管している空港へ。いきなり見知らぬ美形とプライベートジェットに乗せられるとかどんな苦行。  十人以上乗せることができるプライベートジェットだけど、となりに座らないのはおかしいだろうと空気を読んで司さんのとなりに腰を下ろした。  見るものすべてを圧倒しそうな切れ長で、金に近い焦げ茶の瞳。すらりとした細身の体は、まるでモデルのようだ。端正な顔立ちをしているけれど、みっちーには似ていない。司さんはお父さん似なのかもしれない。 「えっと、神谷旺二郎です、よろしくお願いします」 「そんなに堅くなるな。俺はお前の兄と姉を知っているぞ」 「え、そうなんですか」 「ああ。二人は俺の後輩にあたる」  司さんはシャンパン片手ににっこり微笑む。なんてバブリー。絵になるから恐ろしい。  兄貴と姉貴は双子で、二人とも華やかな容姿をしているからどこにいても目立つ。姉貴はその美貌を武器にそれはもう奔放に生きている。兄貴は姉貴とまるで反対、真面目で慎重。双子で容姿も似ているのに、二人は正反対だ。 「俺が三年の時、神谷兄妹は一年だったな。美形の双子だと話題になっていたからよく覚えている」 「兄貴は顔も性格もいいですけど、姉貴は中身が残念すぎますけど」  俺の心をなんど抉ってきたことか。あんな性格じゃ顔がいくらよくてもだめだ。顔も性格もパーフェクトな兄貴を見習ってほしい。 「はっ、旺二郎なかなか言うじゃないか」  司さんは上機嫌に笑い「出発してくれ」パイロットへと声をかける。  これから沖縄に行くのかとようやく実感してきたのか、ばくばく心臓が跳ねる。むかしの俺だったら、一人でどこかへ向かおうなんて思わなかった。四信先輩が俺を変えてくれた。恋ってすごい。だめだめだった俺を、少しずつ前へ進めてくれている。  そういえば司さんはなにしに沖縄へ行くのだろうか。俺の付き添いというわけではないはずだ。白金財閥はいろんなことをしているから、沖縄にも仕事で行くのかもしれない。 「司さんは仕事で沖縄に行くんですか?」 「まさか。愛しの子猫に会いに行く」  子猫――統花様も、やたらと「私の子猫」と言っていたことを思い出す。  さすがの俺でもわかる。ただの子猫じゃない。だって、司さんの口角が楽しげに上がっている。これ以上聞くのは野暮だ。司さんの左手薬指に光る指輪を見ないふりをして「俺も愛しい人に会いに行くんです」と答えた。 「そうか、お互い楽しいバカンスにしよう」  司さんは嬉しげに微笑む。その人を心から愛しているのだとひしひしと伝わり、小さく頷いた。  みっちーのお兄さんもやっぱり王様だ。自分の幸せよりも、いつもは民の幸せを願っている。そのためにビジネス的な結婚をしたのだろう。白金の人間は、俺にはわからない世界に生きている。きっと幸せなことばかりではない。だからこそみっちーも、司さんも、統花様も、どうか一人の人間としての幸せを掴んでほしい。  プライベートジェットの窓から外を眺める。どこまでも澄みきった青い空と白い雲。はやく四信先輩に会いたい。そう思わせる美しい景色だ。

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