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6.猫娘のクラスメイト
メイド喫茶を出ると、猫娘にあった。
……いや、だからどうして、女装したがる?
「青木」
馴れ馴れしく猫娘が肩を叩く。
誰かと思えば教室では隣の席の森下だった。
「ぷっ。
……なに、その格好」
笑ってはいけないと思うが、いかにも柔道部な森下が膝丈のプリーツスカートにあたまにでかいリボンをつけてりゃ、無理だって。
「笑うな。
先輩に無理矢理させられたんだ」
「いや、ごめん」
ポリポリと恥ずかしそうに頬を掻く森下が、意外と乗り気に見えるのは僕だけ?
「部活でお化け屋敷をやってるんだ。
寄ってけ」
「いや、僕は」
「いいから」
僕の都合なんて無視して強引にお化け屋敷に案内され、手の中の券が一枚消えた。
全部食券かと思ったら、そうではなかったらしい。
お化け役の森下は脅かさなくていいのか、僕と一緒にお化け屋敷の中を歩く。
「森下は仕事しなくても……ひゃぁっ!」
突然、掴まれた足に情けない悲鳴を上げてしまった僕に、森下はおかしそうに笑ってる。
「んー?
お客さんの反応を見る、モニタリング中?」
「趣味悪……ひぃっ!」
べろん、顔に当たった柔らかくて冷たいもの――こんにゃくだろうか――にまた、悲鳴を上げてしまう。
「青木っていっつも勉強ばっかしてるからこういうの、興味ないのかと思ってた」
「あー、そうだ、ねっ!」
破れ障子から突き出てきた腕は、どうにかかわす。
……そうだ、興味はなかったのだ。
武原に無理矢理追い出されて。
……けれど。
「意外と話しやすいのね、おまえ。
これからもっと絡んでいい?」
「あー、うん」
笑顔で手を振る森下に見送られてお化け屋敷をあとにする。
クラスメイトとは必要最低限しか話してこなかった。
でも、これで、……友達という奴に一歩近づいたんだろうか。
お化け屋敷を出る頃にはなんだか楽しくなってきて、あちこち自分で覗いて回った。
武原から預かった券はだいぶ減っていたが、あとで弁償して許してもらえばいいや、と思っていた。
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