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7.後夜祭

「すみません、遅くなりました」 生物準備室に戻ったのは、一般公開終了間際の時間だった。 両手にたこ焼きやなんかの入った袋を下げた僕に、武原はにやにや笑っていた。 「あの、すみません。 預かった券、無断で何枚か使ってしまいました」 「いや、別にいい。 どうせ、持って帰れないものもあっただろ」 ごそごそと袋を開けると、武原は早速たこ焼きを食べ始める。 「その、使った分、お金払いますので」 「いいって。 おまえが使わなかったら、ただのゴミになってたものだからな」 にやにや、にやにや、楽しそうに笑っている武原に、かっと頬が熱くなった。 ……この人は、僕が文化祭を楽しんでいたのを知っている。 そのために、券を握らせて外に出した。 そういう人だから、僕は。 後夜祭、生物準備室で、並んで窓から遠くのキャンプファイヤーを見ていた。 「行かなくていいのか」 「今年はいいです」 初めて参加した文化祭、思いの外楽しかった。 森下とはこれから、もう少し話ができそうな気がする。 来年はちゃんと、クラスの展示に参加してもいいかもしれない。 きっと、こんな気持ちになったのも武原のせい。 「今年は、か」 片頬でニヤリと笑うと、武原が煙草に火をつける。 「煙草ってそんなにおいしいんですか」 ただ、なんとなく聞いてみただけだった。 それが、こんなことになるなんて知らずに。 「ん? これか?」 くわえていた煙草をはずすと、武原の唇が僕の唇に重なった。 「まー、うまくなはいけどな」 黙ってしまった僕に、武原はにやにやと楽しそうに笑っていた。 代休が終わって学校に行くと、武原の姿はなかった。 元々臨時採用だったし、留学が決まって文化祭が終わったら、学校を去る予定だったらしい。 放課後、生物準備室に行くと、まるで置きみやげのようにいつも武原が使っていたライターが置いてあった。 僕はそれを、そっと鞄の中にしまった。

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