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第4話
出雲はいつか、好きな人ができて結婚して子供と孫に囲まれて……ありふれた、幸せな家庭を築くだろう。
それでも、いい。
俺は出雲が好きだけど、付き合えるだなんて思っちゃいない。距離感だって、親友として絶対に保ち続ける。
困らせたいわけじゃないし、多くを望んだりもしない。
ただ、一番の親友でいられたら……それだけで、十分だ。
「照は肩もみとか、下手だろ」
「何で確信を持って言った? 発言に、一切の迷いを感じなかったんだけど?」
「そういう眉毛してるから」
「弱い! 理由が弱いよ!」
大きな声でツッコミを入れると、出雲が笑う。普段は難しい顔をしてゲームをプレイしているか、ゲームの最新情報をネットで収集している出雲の笑顔を見ると、胸が高鳴る。
だけど、表情には出さない。
出雲に対してドキドキしたり、期待したり悲しくなったりしたことは、ある。
その度に隠して、我慢して平静を装っていたら……ポーカーフェイスが得意になってしまったのだ。
きっと、出雲は一生……俺の気持ちを知らないままだろう。
――それでいいんだ。
「じゃあ、僕の肩……揉んでみる?」
「よし、任せろ!」
こういうスキンシップも、俺と出雲じゃ捉え方が違う。
俺からしたら、下心のある触れ合い。
出雲からしたら、ただのマッサージ。
だけど俺達は親友だから、変に意識した素振りを見せてはいけない。
「おりゃりゃりゃりゃ~!」
「シンプルにくすぐったいんだけど。絶対わざとだろ、その手付き」
こうやって、笑いにできてる。
――大丈夫。
――俺は、上手く笑っている筈だ。
大好きな親友から手を離し、俺と出雲は笑い合った。
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