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ちゅっちゅと一志さんの柔らかい唇を啄ばんで緊張している体を解しながら、上着を脱がしていく。一番上まできっちりと締められたネクタイにさえ、一志さんらしさが垣間見えるなと口元を緩め、指を差し込んでゆっくり外す。
一志さんが纏うパーツを剥いでいくたびに、馬鹿みたいに心臓が音を立てている。好きな人を脱がしていく行為が、これほどドキドキするなんて知らなかった。
今までそれなりに女性は抱いてきたけれど、服を脱がす作業はものすごく怠く感じていた。そもそも、セックスは僕にとって作業だった。好きだよ、愛していると口で言っても安心しない女性を黙らせるために、セックスをしてきた。自分から脱がしたい、触れたいと思ったのは一志さんが初めてだ。
「ねぇ、一志さん、どこ触られたの」
「言ったら、そこに触るのか」
「もちろん。でも安心して、どんなに勃っても挿れたりしない。血の涙を流して我慢するから」
「血の涙は流さないでくれないか、心配になる。ふつうの涙にしろ」
冗談を言い合いながら、シャツのボタンをひとつずつ外していく。いつもはきっちりしたスーツに隠された美しい鎖骨があらわになっただけで、ドクドクと下半身に熱がこもる。
鎖骨見ただけで勃つとかどうなっているんだろうね。中学生よりすごくない? なかなか勃たない性質だと思っていたのに、対一志さんだとすぐに元気になるの本当にやめてくれるかな、僕の息子。
「鎖骨に触られたりした?」
鎖骨のくぼみに舌を這わせ、なぞるように舐めながら、するりとシャツの中に手を入れる。色気だだ漏れの細腰だと思っていたけれど、お腹も余分なものがいっさいついていない。ゆっくりと薄いお腹を撫で、徐々に手を胸元まで上げていく。
「ん、く……ふ、ぁ……ッ!」
「お腹とか、乳首とかも撫で回された?」
「ッ……さわ、っ……ら、れた、け、どぉ……っ!」
たったそれだけのことで一志さんは軽く仰け反り、僕の肩をきゅっと掴む。さっきまで体がガチガチだったのに、肩を掴んだ手は弱々しい。
「触られたけど、なぁに?」
シャツを捲り上げようとすると「ぁ、まっ、て」真っ赤な顔をした一志さんに掴まれる。さっきより力を入れようとしているけれどくたくたの手は、抵抗というよりも、もっとと僕を煽っているようにしか思えない。にっこり口角を上げ、勢いよく胸元を剥き出しにするとまだ触っていないはずの乳首がかすかに勃っている。ああ、これを隠したかったのか。えっちだなぁ、一志さんは。
「ぅ、……ッく、……っい、つきの手、ほかの、やつらと、ぜんぜんちが、……んぁ、んン……ッきもち、くて、こまる……ぅ、んッ!」
一志さんの体はどこもかしこも敏感すぎる。元から敏感で、快感を拾いやすい体をしているとは思う。それでも、僕の手は他の男とは違う、気持ちいいと言ってくれた。そんなことを好きな人に言われたら、完全に火が点く。
もっともっと気持ちよくしたい、一志さんに気持ちいいことだけを覚えていてほしい。僕の感触だけを覚えていてほしい。一志さんといると欲が尽きない。
「ふ、ぅ……く、ぅんン……はぁ……ッ!」
人差し指の腹で乳首をくりくりと何度も執拗に転がしていじめていると、赤くぷっくりと勃ち上がる。反対側の乳首もちゅっと吸いつく。唾液で濡れてそそり立つ乳首はいっそういやらしい。もっと触って、愛してと言っているみたいでぞくぞくする。
乳首で感じることが恥ずかしいのか、必死に手の甲で声を抑えようとしている一志さんの姿があまりに可愛い。だからこそ、声が聞きたい。気持ちよくてしょうがないとはしたなく声を上げてほしい。
「ッい、つき、ま、っ、やだっ、だめ、やっ、ぁ……っんぁあッ!」
真っ赤に腫れ上がっている乳首を人差し指と親指でくにくにと感触を楽しんでから、ギュッと強く摘み上げる。反対側は甘く歯を立てて、ちゅうっと引っ張ると、一志さんはひときわ高い声で僕の名前を呼んでビクビクと仰け反った。もしかして、軽くイッた? 乳首だけで? 一志さんえっちすぎない?
薄い胸を激しく上下にさせながら、一志さんは太腿をもじつかせている。軽くイったせいで濡れたスラックスを隠しているつもりかもしれない。はー、もう、可愛いなぁ。荒い息を吐いて太腿擦りつけるなんてさぁ、あまりにえっちすぎでしょ。すり、と一志さんの太腿を撫でると、恥ずかしいのか眉尻を下げながらも、潤んだ瞳で僕を睨む。そんな目で睨まれても逆効果だ、興奮する。
「ぅあっ……ッいま、さわる、なぁ……っ!」
「一志さん、今軽くイッたでしょ」
「……イ、ってな、い」
「じゃあ、一志さんの足を割り開いてもいいよね?」
「なっ、……ぅ、だめ、だ」
「でも、中途半端にイッて気持ち悪いでしょ」
「そんなこと、ない……五喜のそれのほうが、よっぽどつらそうだ」
それと言った一志さんの視線を辿らなくてもわかる。妄想よりずっと可愛い一志さんの痴態に痛いほど勃起して、袴を押し上げている自身のことだろう。
「大丈夫、一志さんをどうこうしたりしないよ。一人でするから安心して」
今日は頭の中で妄想していた一志さんの痴態をこの目で見られたのだ、おかずは決まったも同然。
一志さんの太腿を撫で回しながらにっこり笑っても、一志さんは納得していないのか、眉根を寄せている。
「五喜はいつも一人でしていたのか」
「まぁ、いつも一人でしてたけど、一志さんのせいじゃないからね。すぐ一志さんに興奮する僕が悪い」
いつもの軽い冗談を口にしても、やっぱり一志さんはじっと僕を見つめてくる。「可愛いがすぎる罪でキスしちゃうよ」太腿を撫で回していた手を腰に回して、ぐいっと抱き寄せる。ゆっくり鼻先を擦りつけていると、ちゅうっと唇に吸いつかれ、驚きのあまり目を閉じられない。一志さんからのキスは、やっぱり特別だ。
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