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ときめきエプロン_05

「ぅ、あっ……っあれ、ここ……ひ、ぅ……っ」  ゆっくり目を開けると、じっとり汗が滲んでいる五喜がゆさゆさと俺の体を揺らしていることに気がついて完全に目が覚めた。  背中に当たるのは冷たい冷蔵庫ではなく、ふかふかのベッド。意識を手放した俺を抱き上げて、五喜が寝室まで運んでくれたのだろう。申し訳なさとありがたさが頭によぎるも、ナカに熱い昂りを感じて思わず仰け反った。  もしかして、運んでいる時も挿れたままだったのだろうか。五喜には賢者タイムがないのか、そう疑問を覚えるほど、一度火が点くと止まらない。挿入すると、俺がどれだけ泣こうと喚こうと、なかなか離してくれないのだ。 「っおはよ一志さん、気持ちよすぎて気絶するとは思わなかったよ――ほんとこのエプロン、新妻って感じで一志さんにぴったりだなぁ」  五喜に右足をすりっと撫でられ、足首にキスをされてから五喜の肩へと乗せられた衝撃でひらり、エプロンが捲れてぐしょぐしょの太腿がかすかに覗く。必死に裾を掴もうとするも、上機嫌に口角を上げた五喜の手が非情にもエプロンを完全に捲り上げ、昂りまでも丸出しにされてしまった。はずかしい、やめろ、眉根をきつく寄せると、五喜はすりすり太腿の付け根を揉みこんでくる。五喜に触られると、どこもかしこも性感帯になってしまうほどに、気持ちいい。 「っに、づまじゃな……ぅう、ぁっ、……っそこ、ばっか、やらぁ……っ」  ずっと深いところで五喜を咥えこんでいたからか、奥がじくじくしてしょうがない。それなのに、さっきから五喜はぬちぬち浅いところばかりを執拗に刺激してくる。あまりにも甘くて、いじわるだ。  ますます口元を緩ませた五喜はエプロンの上からぷっくり腫れている突起を指の腹で転がしてくる。やっぱり、わざとやっている。ひたすら甘いし、きもちいい、だけど、決定打に欠ける刺激でじわじわ俺を殺す気だ。 「ここばっかやなの? じゃあ、抜いちゃおうか」 「……ッ! っい、じわる……っ」  ずるりと五喜は入り口ギリギリまで昂りを引き抜いて、突起をくりくり摘んでくる。ずるい、いじわる、でもすき、だいすき。  甘すぎる刺激に涙が滲んだ瞳で五喜を見つめ、突起をいじり続ける五喜の手を掴む。「どうしたの、一志さん」にっこり意地悪く微笑む恋人に、もうどうにでもなれと震える唇を開いた。 「っもっと、おく、がいい、いつきので、ごんごんついて……ッは、くぅ……っあぁっ、ふかいぃ……っ!」  ずちゅんっ! 前立腺を潰しながら五喜の昂りが一気に奥まで貫いたから、呼吸がうまくできない。それなのに五喜は容赦のないピストンで快感の波を引かせまいとしてくる。奥をノックしてくる五喜からは意地悪い顔が消え、快感に酔いしれるただの男になっていた。あ、その顔、すき、俺だけが知っている五喜だ。 「は、――っかわいい、一志さん、すき、だいすき、一日中、突いてあげる、ねっ!」  エプロンの隙間から五喜の手が差し込まれ、直接胸を撫でられる。汗ばんだ五喜の手がきもちよくて、びくりと腰が跳ねてしまった。ふっと笑った五喜はしこしこと突起を扱きながら、ゴンゴンと獣みたいに奥深くを攻めてくるから、制御不能な快感にナカがうねり、五喜に絡みつく。俺の体なのに、ちっとも言うことがきかない。  この世界に俺と五喜しかいないんじゃないか、そう思うほどに激しく愛し合い、二人の世界に溺れた。 「……もう一歩もうごけない」 「ごめんなさい反省してます一志さんが僕の妄想を軽く超えてきたから興奮しちゃいました」  カーテンの隙間から差し込んだ朝日に目を細め、また朝まで抱き合ってしまったことに気づいた。  休日だったからよかったものの、体に力が入りそうにない。ぐったりベッドに崩れ落ちた俺を五喜は当たり前のように姫抱きしてくる。こうなった日はいつもお風呂で体を綺麗にしてくれるのだけど、それが死ぬほどはずかしい。はずかしいうえに、また五喜が興奮することがある。あんなに出しただろ、お前は底なし沼かといつも絶句してしまう。 「……もうこれ脱いでいいか」 「僕が脱がせるからだめ」  ぐちょぐちょになったフリフリエプロンの結び目を解こうと残った力で背中に腕を回そうとすると、きっぱりと真顔で言われて思わず小さく笑った。 「コスプレとかまったく興味なかったんだけど、一志さんにエプロン似合いすぎていろんなプレイしたいなぁ」 「却下だ」 「なんで! 一志さんだってノリノリだったよ」 「……それは、否定できない、けど」  いつもより素直になれた気はするけれど、断じてエプロンのおかげではないはずだと眉を下げると、顔中に五喜のキスがふる。  くすぐったくて、きもちよくて、なによりもいとしい。まつげが自然と震える。このいとしさを返したいと、汗ではりついた五喜の前髪を優しく撫で梳いた。 「僕が教師で一志さんがセーラー服」 「なにを言っているんだお前は。せめてブレザーだろ」 「ブレザーのスカートもありだよね」 「なんで女装前提なんだ」 「スカートの裾掴んで恥じらう一志さんが見たいから。今日もエプロンの裾掴んでる一志さん最高だった、じわじわ恥ずかしいから気持ちいいにシフトしていく姿なんて本当に可愛い」  あまりにも清々しい。情事中の俺を語ってくる五喜の瞳はうっとりとろけている。その目、ずるい。ドキドキする。口にだしている言葉はあまりに卑猥なことなのに、五喜の目だけで俺の胸はたしかに高鳴るのだ。 「……考えておく」 「えっ」 「……五喜はかっちりしたスーツな」 「っ一志さん大好き、いっぱい気持ちよくなろうね」  ほかの大人の前では、どこまでも完璧な優等生。その五喜が俺の前でだけ、いろんな表情を見せてくれる。大人みたいにすました表情で微笑んでいる五喜も好きだけど、いまみたいにキラキラ瞳を輝かせて無邪気に笑う五喜は最高に可愛い。 「俺も、大好きだぞ」  五喜の耳元で囁いて、やわらかい耳朶にちゅうっとキスをする。じわりと白い耳が染まる姿を目の当たりにして思わず微笑んでいると「お風呂でも抱きたい、抱く、ぜったい」はぁーっと五喜は荒い吐息を漏らした。  あ、五喜の中の雄スイッチを入れてしまった。それなら大人として責任を取らなければと「……一回だけだからな」こくりと頷いた。  一回だけと言って、一回ですんだ試しはない。それなのに毎回そう言ってしまう俺はとことん五喜に甘いなと首に腕を回して五喜の唇を奪った。五喜の瞳が見開いたのは一瞬で、すぐにゆるやかに弧を描いて、風呂につくまで夢中になってキスを交わした。

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