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口づけはひそかに_04

「っねぇ、一志さん、僕は、一志さん似の女の子がいいんだけど」  きっと可愛いだろうなぁ。可愛すぎて嫁にやらないと言うタイプのめんどくさい父親になりそう。僕に似ている男の子だったら、一志さんの取り合いになりそうだからものすごくいやだ。 「っあんッ! っぁ、あ、ああっ……!」  すり、一志さんの薄いお腹を撫で、たえまなく可愛い声を上げる唇に吸いつく。かぁっと目尻まで赤く染め上げる一志さんが可愛くて、もっともっととろとろに愛したくなる。  ぬちゅぬちゅずちゅん! 浅いところを抉ってから、前立腺を擦り上げ奥深くまで入り込む。一志さんのイイところぜんぶを攻めると、快感の涙をぼろぼろとこぼして僕にしがみついてくる。あー、可愛い。れろ、涙を舌で掬い取り顔中にキスの雨を降らした。 「一志さんはどっちがいい? 毎日子作りしようね」 「っぅう……っば、かぁ……いまだって、まいにちシてる、だろぉっ……ッひ、ぁ、あっ……!」  一志さんの仰るとおりだ、僕たちは毎日子作りをしている。  ちゅっちゅっと真っ赤な耳殻にキスをしながら、一番奥を突き上げる。恥じらいながらも僕の律動に合わせて腰を揺らす一志さんはとびきりえっちで最高だ。  あー、気持ちよすぎてもう出そうと吐息をこぼした刹那、扉の向こう側でコツコツと革靴の音がする。僕の耳に届いているのだから、一志さんにはもっとよく聞こえているだろう。今にも溶けだしそうなほど潤んだ黒い瞳には『今は突かないでくれ』と懇願が浮かび、やわらかい唇は隙間なく閉じる。本当は僕だって聞かせたくないのに、そんなに可愛い顔をされたらちょっと意地悪したくなるのが男の性。  耳の入り口を舌先で突っついて「一志さん、可愛い声、ちゃんと我慢してね」ちゅうっと耳元でリップ音を立てた。  惑う一志さんとは裏腹に、一志さんの中はきゅうきゅう僕に甘く絡んで期待している。大和撫子並に恥じらいを持っているのに、体は敏感だなんてまるでAV。相手役はもちろん僕しか認めないけど。 「っふぅ、っーー……くッぁ、あっんぅう……っ!」  手の甲で声を押し殺そうとする一志さんの両手を掴んで扉に押しつける。『声を我慢しろと言ったのにどうして』一志さんの心の声が困惑する瞳からだだ漏れだ。ごめんね一志さん、ついさっき優しさスイッチをオフにしたんだよね。ゆるく口角を上げ、ゴリュゴリュ前立腺を亀頭で押し潰す。ぴたりと閉じていた一志さんの唇からはたまらず声が漏れ、大きく仰け反った一志さんの体がガタガタ扉を揺らした。  コツ、と革靴の音が止まる。僕たちの部屋の前で激しい音がしたからだろうか、不審に思って立ち止まっているのかもしれない。一志さんははっと目を見開いて、唇をふるふる震わせる。あー、可愛い。好きな子ほどいじめたいなんて僕は幼稚園児だろうか。 「……いつき、キスしてくれ、声、でちゃう……っは、ぁあッ……な、んでおっきく……っん、む」  潤んだ黒い瞳。そのうえ上目遣いでおねだり。効果抜群すぎる。すっかり瀕死だ。ずくんと一志さんの中で爆発寸前レベルまで腫れ上がる。「……なんでって、一志さんが可愛いこと言うからでしょ」情けなく眉尻を下げて微笑むと、一志さんの唇を塞ぐように口付けた。  扉に押しつけていた一志さんの手と恋人繋ぎをして、熱い舌を絡め合う。この体勢、コマーシャルで通用するかもしれない、ぬちゅぬちゅ浅いところで抽挿していることを除けば。  それにしても革靴男(女かもしれないけれど)なかなか歩き出さないなぁ。革靴男が部屋に入った音がしたら入り口まで引き抜いて、一気に奥まで突き上げよう。もうほとんど限界、むしろ限界突破しているかもしれないけれど我慢だ広尾五喜。それまでは、一志さんとのキスをたっぷり堪能しよう。 「は、ッ……部屋入った、みたいだ、ね」  ガチャリ、鍵が開く。早く部屋に入ってくれと祈っていると、今度はパタンと扉が閉まる音。  ほっと安堵し、一志さんの口内に熱い吐息を吹き込む。ふるり、一志さんは体を震わせ、じっと僕を見上げてくる。だから、上目遣いはずるいってば。  熱を持った一志さんの手が僕の頬を撫でる。どこか躊躇いがち、だけどなにか言いたげに。「どうしたの、一志さん」住人が部屋に入ったことだし、僕は一志さんの一番奥の部屋にノックしたいんだけどな。 「……っいつき、ぃ……おく、ついてぇ……っ」  あ、やばい。イくかと思った。  僕を求める一志さんの甘い声。とろとろになった黒い瞳に浮かぶハート。キュンキュンと僕の昂りに吸いつく一志さんの中。桜色の頬に浮かぶ涙と汗。本日三度目、頭の中でぷつんとなにかが切れる音。今度はなにが切れたのだろう、自分でもとっくにわからない。ひとつだけわかるのは、僕の一志さんが可愛すぎて困る。 「ぁっあぁあっ!! ……っひ、あっ、ぁあ……っ、っき、いつきっ……ッ!」  ぱちゅぱちゅん、と奥を突き上げるたびに互いの肌がぶつかる。どこまでも卑猥な音だ。それなのに、一志さんからは清楚さが失われない。だからこそよけいにいやらしくて興奮する。もみっと一志さんの小さなお尻を揉みしだくと、どこに触れられても感じるのか、一志さんの昂りからはだらだらと先走りがこぼれていた。  ココと中、両方同時でイけたら、一志さんはどんな可愛い顔を見せてくれるだろうか。むくむくと沸いた欲を止めることができず、一志さんの右足を持ち上げると、いっそう深くまで何度と何度も突き立てる。 「っ一志さん、すきだよ、だいすき、あー、もう、かわいすぎてしんどい、すき、もー、イきそ……っ」 「っんぁ! ぁ、あっ、あ……おれも、すき、だいすきっ、……ッッ!!」  快感で震える一志さんの手が僕の頬を撫でる。僕の一志さんは本当にかわいいと口角を上げて深く唇を合わせ、ずっずっと腰を突き動かす。快感がじわじわと上り詰めたかと思えば、急速に迫り来る。  ずちゅ、ずちゅ、どちゅん! ひときわ奥を貫いた瞬間、一志さんの中はキュンキュン激しく蠢いて、お腹に擦れる一志さんの昂りからビュクリと白濁が溢れる。中でもココでもイッているのだろう、制御不能な快感に一志さんは「ふぅー、ふ、ぅ、ぁあ……っ」たえまなく声をもらし、僕の昂りからすべてを搾り取ろうと吸いついてくる。甘い締めつけに抗えるわけもなく、一志さんの腰を強く掴むと灼熱の欲を放った。 「は、ぁ、はぁーーっ、はぁ……っ、いつき、きもちよかった……」  うっとり恍惚とした表情で一志さんは僕の頬に触れ、ちゅうっとキスをしてくる。  ぷつん、どうしよう、また頭の中でなにかが切れた。そのうえ、むくむく一志さんの中で昂りに欲が漲る。とろとろしていた一志さんは困惑した様子で「はぅっ……な、んで、またっ……」視線を下ろして僕の下半身を見つめてきた。なんでって、そりゃ、一志さんが可愛いからだよね。 「一志さんが可愛すぎて元気になっちゃったよ、ねぇ一志さん、もう一回シようか」  あ、もう一回ですむかはわからないけど。心の中でこっそりつけ足す。  一志さんは眉尻を下げながらも僕をはねのけたりはしない。ゆっくり僕の首へ腕を回し「……もう一回だけだぞ」と聖母のような微笑みで僕の唇に吸いついた。

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