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【01/優斗】キスから始まる④

次の日――  和馬の朝は早い。僕が起きる頃には、もう学校で朝練中だ。欠伸をしながら鍵をポストに入れて、後からゆっくりと学校に向かう。 「ん?」  と、校門の前にグレーのブレザーが立っていた。若干、嫌な予感がする。なるべく見ないようにするが、黒い集団の中にあると、嫌でも目につく。 「ねぇねぇ校門の前、超かっこいい人がいるんだけど!」 「あの制服、北高だよね?」 「じゃあ頭いいじゃん! 誰かの彼氏かな?」 「うちの学校なんて相手にされないっしょ」 「声かけてみる?」  前を歩く女子たちが騒いでいる。  何にせよ、僕には関係ない。前を向き、忌々しいブレザーの前を素通りしようとした時だった。 「ユウ」  呼び止められて、思わず固まる。昨日のあいつだと、一瞬で理解した。  勇気をだして、ゆっくりと顔を向ける。 「忘れ物だよ」  差し出された鞄には、見覚えのある傷が。確かに僕のものだった。 「あ、ありがとう……」  戸惑いつつ、手を伸ばす。が、掴もうとした瞬間、鞄をさっと引かれてしまった。 「ちょっ!」 「ユウのせいで俺は遅刻確定なんだ」  意地悪な笑みが記憶と重なり、キスの感触が蘇る。嫌悪感に身体が震えた。 「少し話そう」  この男に近づきたくない。でも、なぜ僕のことを知っているのかは気になった。病院に行くなら、寝ている間に何をしていたのか、伝えられた方が話は早いだろうし……。  結局、好奇心が勝った。そして、裏庭なら朝は人が来ないはずだと思いつき、彼を案内した。

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