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【02/蒼生】俺のユウ①
「あと少しっ……」
初めて会った時は、別に何とも思わなかった。
「も、もうちょっとっ……」
無視をすることも出来たんだけどね。ほんの気まぐれだった。
「あ……」
「どうぞ」
駅前の図書館で、高い位置の本をとってあげた。女の子なら助けなかった。惚れられても面倒だからね。
でも……あいつは男のくせに、俺に懐いてしまった。誤算だったよ。
「いつもこの席にいるよね?」
「そうかもね」
「隣に座ってもいい?」
「そういうのは座る前に聞くべきだよ」
明るくて、人懐っこくて、良い子だとは思ったさ。だけど邪魔だった。俺は1人の時間を大切にするタイプだからね。
「北川高校って、頭いいよね」
「君の学校は良くないよね」
あえて冷たく言い放つ。でも、ユウは嬉しそうに笑ったんだ。
「バカだよ、でも、体育科はすごいんだ!」
「ユウは体育科?」
「ううん、普通科。だからただのバカだよ」
「なぜ中学で勉強しなかったんだい?」
「んー、苦手だし、勉強する環境でもなかったし、仕方ないかな」
よく喋るし、よく笑う。でも、俺の読書や勉強の邪魔はしない。隣にいてもいいかと思い始めてから、居心地良く感じるまで、そう時間はかからなかったよ。
「あ、もう時間だ」
「塾?」
「違うよ、門限」
「早すぎないか?」
「事情があるんだよ」
「事情ってーー」
「やばい、急がなくちゃ」
ユウの門限は早すぎて、図書館以外で会うことは難しかった。だから俺たちは、放課後の数時間を一緒に過ごすだけの、少しだけ特別な友達だった。
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