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【08/優斗】報告②

「おまえ、今日休んだのか?」 「うん」 食器を洗いながら答えた。 「神永先生と話したぞ」 あいつ、わざわざ体育科まで聞きに行ったのか? ……いや、多分図書室だ。 和馬は読まないくせに、よく本を借りている。 あいつもよく図書室に出没するらしいし、それで話したのだろうと推理した。 「病院に行ったはずだって答えといたけど、合ってるか?」 「ううん、病院には行けなかったんだ。色々あってさ……」 蛇口を止める。タオルで手を拭くと、和馬の前に正座した。 和馬の少し驚いた顔を見つめながら、深呼吸をひとつ。そして、単刀直入に話した。 「あ、あのさ……僕、夢遊病じゃなくて、二重人格かもしれない……」 「え?」 和馬が身を乗り出す。 「どうしてそう思った?」 「あぁ……っと、昨日の話の続きみたいになるんだけどさ? ほら、図書館で……」 「知らない人が、優斗のことを知ってたって話?」 「そう、その話。今日さ、またそいつに会ったんだ」 穴があくほど見つめられているのを感じる。 真剣に聞いてくれるのは嬉しいが、おかげで必要以上に緊張してしまう。 「どこで会った?」 「あ、朝うちの学校で。あと、そいつの家で……」 「どういうことだ?」 「朝、僕の鞄を持って、校門に立ってた。で、ちょっと言い合いになって、勢いで帰って……なのに目が覚めたら、そいつの家にいたんだ」 「家に? そいつは一体……」 「北高の蒼生ってやつ。僕のことをユウって呼んだ」 「蒼生……ユウ……」 「で、その蒼生ってやつが僕のことを二重人格だって……もうひとつの人格がユウだって言ったんだ」 和馬は眉根を寄せ、考え込むように下を向いた。 「蒼生とユウ、付き合ってるらしい」 「はぁっ!?」 普段クールな和馬が、目を大きくして驚いた。 「つまり、僕のもうひとつの人格が、勝手に彼氏を作っていたんだ」 「あいつ……」 「ねぇ、どう思う? 僕のこと、気持ち悪いと思う?」 「……優斗は大丈夫なのか?」 「実感はあまりないから……でも、僕は僕の知らないところで、男とイチャついてるんだ。最低だろ?」 「あぁ、確かに最低だな」 和馬の片眉がピクッと動いた。 引かれたかもしれない。和馬の不快感を敏感にキャッチし、凹んだ。 「蒼生だっけ? 二重人格と知ってて優斗を……自分勝手で最低なやつだ」 「和馬……」 「なぁ、蒼生ってやつと連絡とれるか?」 「ごめん、連絡先は知らない。でも、いつも駅前の図書館にいるみたいだし、顔なら分かるよ」 「じゃあ明日、図書館に付き合ってくれるか? 一度話してみたい」 「わかった」 僕は蒼生と冷静に話をすることができない。冷静に話せなければ、解決策も見えてこない。 心強かった。無意識の行動に対する恐怖、不安、怒り……母関係のストレス……正直、限界だった。 和馬がいてくれて、本当に良かった。

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