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【08/優斗】報告③
「あ、多分あいつ……」
「どれ?」
「ほら、そこのカウンター席の、あ! こっち見た!」
次の日の放課後。和馬は病院に行くと嘘をついて部活を休んだ。
外から図書館を眺めただけで、あっさりと目的の人物を見つけることに成功してしまった僕と和馬。
目が合った蒼生は、荷物をまとめて立ち上がり、外に出てきた。
「君は……優斗だね」
「あぁ。先日はご丁寧な地図をどうも」
「無事に帰れたようで安心したよ」
そう言って微笑む蒼生は、むかつくほど爽やかだった。
「優斗」
僕と蒼生を遮るように、和馬が鍵を差し出す。蒼生の微笑みが消えた。
「帰って待っててくれ」
断れる雰囲気ではなかった。
「……分かった」
昨日掴まれた腕の痛みを思い出す。僕がいない方が、蒼生も冷静になれるだろう。
和馬を信じて、来た道を戻った。
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