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【10/和馬】和馬と蒼生①
「僕、夢遊病じゃなくて、二重人格かもしれない……」
優斗が二重人格のことを知ってしまった。
きちんと話そうと思った矢先のことだった――。
「蒼生とユウ、付き合ってるらしい」
優斗に迷惑をかけるなと、あれほど言ったのに!
勝手に恋人を作られて、しかもそれが男で、優斗のストレスは計り知れない。
本人はまだピンときていないようだが、その事実はじわじわと優斗を苦しめるはずだ。
ずっと説明する機会を窺っていたし、少しずつ、丁寧に話してやりたかった。
それがこんな形で、強引に情報を突っ込まれて……ユウ達は、一体何を考えているんだ?
「なぁ、蒼生ってやつと連絡とれるか?」
ユウには何を言っても無駄だ。なら、蒼生と話をするしかない。
オレは決めた。明日、ユウの彼氏に会う。
***
「初めまして、蒼生といいます」
綺麗な顔をした男だった。
差し出された手は白く、細く、繊細で、生活感がなかった。
「……和馬だ」
オレはその手を無視した。蒼生は行き場を失った手を握ったり開いたりしながら引っ込めて笑った。
「仲良くするために来たわけじゃない」
「そうみたいだね」
「だが、ぶっちゃけノープランで来た」
蒼生は少し驚いた顔をした。そして、微笑んだ。
「なら、まずは自己紹介をしよう。それから利害関係をはっきりさせようか」
「あぁ」
「立ち話は好きじゃない。そこのカフェへ入ってもいいかな?」
確かに、一言二言で終わる話ではない。
それに人目があった方が、お互い冷静に話をできるだろう。
「あぁ」
オレが返事をすると、蒼生は迷わず歩きだした。
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