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【15/和馬】誤解②
「優斗!」
下駄箱で追いついた。慌てて優斗の腕を掴む。
「ごめん、頭の中が混乱してて……」
必死に顔を背ける優斗の目元には涙が……。優斗はユウのことがあって、男同士の恋愛に人一倍嫌悪感がある。だからオレが神永先生とあんな状況だったのを見て、きっとショックだったに違いなかった。
「なんか変な誤解してるよな?」
でも神永先生とどーのこーのと勘違いしてほしくない。そこはすぐにでも訂正したかった。
「大丈夫、驚いただけだから……別に……大丈夫だから」
「大丈夫って、何が?」
「何がって、全部」
「全部って何?」
優斗がオレの手を振りほどこうとする。が、オレはきつく掴んで離さなかった。
「離して」
「離したら逃げるだろ?」
「和馬には関係ない」
「誤解されたままなのは嫌だ」
このまま帰すわけにはいかない。が、弾かれたように振り向いた優斗の目は、オレを責めていた。
「じゃあ、神永とキスしようとしていたのは誤解だった?」
「それは……」
「僕はこの目で見たんだけど、何が誤解なの?」
「だからそれには訳がっ」
「大会で忙しいなんて嘘ついてまでコソコソ会ってさ、言い訳なんてしなくていいよ」
「違っ!」
「もぉーーいーーから! 僕に構うな!!」
まさかの体当たりにオレは突き飛ばされ、その隙に優斗は走り去った。
すぐに追いかけることも出来たが、やめた。
確かに神永先生とのことは誤解だが、オレが男を好きなのは事実だった。
だから何をどう話しても、優斗を傷つける気がして……動けなくなった。
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