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【16/優斗】病院②

病院の帰り道、自然と図書館へ向かった。どうせ暇だし、思い立ったが吉日と言うし……それに時間が経ってしまえば、きっと気が変わってしまうからだ。 「で? ユウってどんなやつ? どこで知り合った?」  図書館の中庭。蒼生に案内され、ベンチに座って話をした。 「あぁ、ここだよ」 「ここって、図書館?」 「そうだよ。読むジャンルは違うけどね、読書が共通の趣味なんだ」 「本……」 教室で寝ていたはずなのに、図書室で目を覚ましたことがある。ユウの趣味が読書だったからなのかと、妙に納得した。 本……本……。 ふと頭に浮かんだ、和馬の本。和馬が本を読む姿を見たことはない。でも、ベッドの枕元の棚には、いつもファンタジーの本が置かれている。その事実が妙に引っかかった。 「もしかして、ファンタジーとか……?」 「あぁ、そうだね。ユウはファンタジーが大好きだよ」 「そ、そうなんだ……」 嫌な予感がした。 和馬はユウのことをずっと前から知っていた可能性が高いのではないか? でも、ならなぜ何も言わないのか? 「君もファンタジーが好きなのかい?」 「え? あ、いや、僕は本なんて読まない……」 和馬に会って、確かめたい。そう思うと、居ても立っても居られなくなった。 「あの……ありがと。僕もう行くね」 「もう?」 「えっとあの……また日を改めて来ます」 動揺し、なぜか敬語が飛び出した。 まだ話し始めたばかりだが、それどころじゃない。とりあえず帰って、そして和馬を待って、それから……どう話そうか? それを今からグルグルと考えることになりそうだった。 「それじゃあ」 僕は逃げるように、その場を去った。 *** 和馬の部屋でベッドに座り、壁の時計を眺めた。秒針の音を聞きながら、和馬を待つ。だが、和馬は部活の時間が延びたこともあり、まだまだ帰って来そうになかった。 「本は、ユウのためだったの?」 枕元の棚に手を伸ばす。いつもの場所に、本はなかった。また今日も借りてくるのだろうか。 「ずっと前からユウを知っていたの?」 ベッドに寝転ぶと、和馬が好きな柔軟剤の匂いがした。 和馬は僕を騙したのか、裏切ったのか……そんなはずはないと思いつつも、考えずにはいられなかった。 「和馬は僕のこと、どう思ってるの?」 和馬は僕じゃなくて、ユウの友達なのかもしれない。ユウのために、僕と仲良くしてくれているのだとしたら……。 時計を見る。まだ早いが、だからこそ動かずにはいられなかった。 学校に行ってみよう。1秒でも早く、和馬と話がしたかった。 胸が苦しい。不安すぎて辛い。でも、和馬はきっと僕を安心させてくれる答えをくれるはずだ。 ネガティブな考えを必死に捨てると、鞄を掴み、玄関のドアを開けた。 だが、外に出た瞬間、軽い眩暈にふらつき……次の瞬間には、手に持っていた何かを落とした。

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