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【19/蒼生】月光

「嫌だろう? さ、帰ろうか」 夜は入れ替わることが多いときいている。つまりユウと会える可能性が高いからね。泊まってほしいのが本音だった。 でも、今、目の前にいるのは優斗だ。友人にはなれたと思うが、まだパジャマパーティーをするほどの仲ではない……っというか、勝手に泊めたらユウがヘソを曲げるに違いない。いらぬ喧嘩を避けるためにも、優斗は帰すべきだと思ったんだ。 だから優斗を玄関へと促した。が、優斗は俺を振り返り、止まった。 「ねぇ」 「ん?」 「僕とユウって、何が違うの?」 真剣な顔で何を言うかと思えば……つい笑ってしまったよ。 「そうだね、何もかもかな」 「何もかも?」 「あぁ、ユウはユウだからね」 身体を共有していても優斗は優斗だし、ユウはユウだ。一緒に笑いながら過ごし、俺に魔法をかけたのは、優斗ではなくユウなんだよ。 それを上手く伝えたいけれど、口で説明するのは難しい。でも、目は口ほどに物を言うってやつなのかな? 真っ直ぐ見つめると、優斗には何かが伝わったようだった。 「蒼生ってさ、ほんっとにユウが好きなんだな」 「そうだね、大好きだよ」 「なんか……羨ましいかも」 「え?」 「だって、自分を――」 優斗が何かを言いかけた時、玄関のドアが勢いよく開いた。 「たっだいまー! あら、あおぴー♪ お出迎えありがとぉぅっ!」 母だった。テンションが高いけれど、別にお酒を飲んでいるわけではないよ。なんとこれが平常運転なんだ。 驚く優斗に、苦笑いで応えるのがやっとだった。 「ん? お友達?」 母が靴を脱ぎながら優斗を見た。 「お、おじゃましてました……」 「いえいえ、あおぴーと仲良くしてくれてありがとうね」 「いえ、あのっ……はい、こちらこそ……」 優斗が困っている。 「ちょうど帰るところだったんだ。駅まで送ってくるよ」 「あら。もう遅いし、明日は休みでしょ? 泊まればいいじゃない。ねぇ?」 「お母さ――」 「なら、お言葉に甘えてもいいですか……」 「優斗っ!?」 「もちろんよ♪ ご両親にはちゃんと連絡してね、必要なら私も話すわ」 「はい、ありがとうございます」 母はさっさとリビングへ歩いていった。 「ごめん、でもやっぱり今日は帰りたくないんだ」 優斗はモジモジと下を向いている。俺はそんな優斗を見下ろしながら、あそこでお言葉に甘える度胸はあるんだなと、変なところで感心してしまったよ。 「何があったか知らないけどね、今日のうちに和馬くんと話した方がいいんじゃないかな?」 「今日は……何を話せばいいのか分からないから……」 「逃げても話しづらくなるだけだよ?」 「分かってる。でも……無理なんだ……」 泣きそうな顔をされては、俺もこれ以上は何も言えない。 「あなたたち、ピザ食べるぅ??」 リビングから母の陽気な声がする。俺は優斗の反応を見て、食べると答えた。

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