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【20/和馬】意味③

「……馬っ!」 「ん……」 ゆっくりと目を開ける。眩しい光の中に、優斗がいた。 「和馬っ!」 強張った表情の優斗が、オレの身体を揺すっている。 「優斗?」 「和馬っ……良かった……」 「どうした?」 ゆっくり起き上がる。床で寝てしまったらしく、少し背中が痛かった。 「どうしたって……床に倒れてたら心配するだろ?」 「あ、あぁ……ごめん」 頭を掻きながら謝った。普通に話せている状況に、少し躊躇う。 「大丈夫?」 「あぁ」 「病院行く?」 「いや、寝てただけだから」 優斗が心配してくれている。それに気付き、嬉しくてつい笑ってしまった。 「なんで笑ってるの?」 「いや……朝飯食うか?」 「もうお昼だよ」 優斗も呆れた顔をして、少し笑った。 「あ、あのさ、和馬……昨日はごめん」 「いや、俺の方こそごめん」 「和馬は謝る必要ないだろ?」 「誤解させた俺も悪い」 目の前に優斗がいる。昨夜の不安が大きかった分、安心も大きかった。緊張の糸が切れて、涙が溢れる。 「えっ!? ちょっ、なんで泣いてんの!?」 優斗の慌てる姿が可笑しくて、泣きながら笑った。 「安心したら出た」 「安心って、僕が悪かったのに……和馬が誰と付き合ってもさ、友達なら祝福するべきだったのに……」 「付き合ってない」 「え?だって――」 「確かにオレの恋愛対象は男だけどな」 「え゛っ!?」 口が滑った。優斗がこの部屋に来ることはなくなるかもしれないな。でも、なんだかスッキリした。 「気持ち悪いだろ? そんなヤツのとこなんて、もう泊まれないよな?」 「あっ、いや……」 「優斗が安心できる場所にしておきたかった。だから隠してた。ごめん……」 優斗は下を向いて黙ってしまった。オレはそんな優斗の頭を撫でそうになり、慌てて手を引っ込める。 「神永先生がオレと付き合いたいのか、遊びたいだけなのかは分からない。どちらにせよオレは相手をする気はない」 そして沈黙が怖くて、自分から神永の話をした。 「でも、強く断れない事情があるんだ。適当に流してはいるが、昨日は危なかった」 「事情って、僕?」 「それは……」 優斗に責任を感じさせたくないのに、気の利いた言葉が出てこない。 「神永が病院に来てくれたり、変だなって思ってたんだ」 「優斗、それは――」 「ねぇ和馬、僕のためにありがとう。でも、そのために和馬が困るのは嫌だ」 「ごめん……」 「ってかさ、僕に相談すれば良かったじゃん」 「ごめん……」 確かに相談するべきだったのかもしれない。でも、時間を巻き戻せたとしても、オレはきっと、何も言えないんだろうな。言えるわけがない。 「ねぇ和馬、お願い」 「何だ?」 「好きな子が出来たら、ちゃんと教えて?」 「え?」 「和馬が神永と付き合ってるかもって考えたら、すごくショックだった。だからちゃんと話してほしいんだ。和馬をとられる心の準備くらいさせてよ」 優斗の言葉には、きっと深い意味はない。友達なのに何も知らなかったからショックだっただけだし、ここへ来られなくなるかもしれないって意味で心の準備が必要なんだろう。でも―― 「和馬が誰を好きでも、それが男でも、気持ち悪いだなんて思わない。だから話して」 「……わかった」 でも、そこに深い意味が欲しかった。 オレの好きな子を知りたいと、優斗は言った。 「好きな子なら、もういる」 オレはゆっくりと口を開いた。

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